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国土交通省高崎河川国道事務所長 森山 誠二さん(前橋市日吉町)

【略歴】岡山県生まれ。東京大工学部卒業後、1986年に建設省(現国土交通省)入省。中国地方建設局、新潟県庁、本省道路局、総合政策局を経て2002年4月から現職。趣味はギョーザ、カレーなど料理。

公共工事



◎悪い点は一つずつ直す

 公共工事と聞いて良い印象を持つ人はどれくらいいるだろうか。

 幾度となく繰り返される発注にともなう不正行為、マスコミから無駄だと揶や揄ゆされる施設の整備。また、道路上で繰り広げられる工事による渋滞。

 公共工事を担う人材を育成する土木工学科の人気も下がっているという。

 ほとんどの学校では、名称を都市環境工学や社会基盤工学などに変更しつつある。名称を変更することで解決するものでもないが、そうせざるを得ない状況になっているということである。

 こういうときこそ原点に返ろう。かつて大ローマ帝国を築いていくなかで、当時の為政者は人間が人間らしい暮らしを行うために、道路や水道などの公共工事を強力に進めた。明治時代の土木技術者は、土木工学は市民の生活を便利にするためのものであると考えていた。

 過酷な肉体作業から解放され、災害の恐怖から解放され、さらには家族や自分にとって自由な時間を過ごす。こういったことを可能とするのが土木工学、つまり公共工事なのである。

 市民に成り代わって行政が責任者となり、計画を立案・策定し、用地買収などを経て、適切に建設会社を選定し、確実に施工監理を行い、そして完成に至る。これらの一連の流れがいわば公共工事といえる。

 この流れのなかで、行政側として反省すべき点も少なからずある。計画にあたっての合意形成や用地買収のスピードアップ、建設会社の選定にあたっての透明性の向上。まだまだありそうだ。

 大切なことは、公共工事に関するすべてのことが悪いのではなく、悪い点もあるということだ。改革の名のもとに、良い点も含めて切り捨ててしまっては元も子もない。原点に立ち返りつつ、悪い点は一つずつ直していくことが重要であると考えている。

 その一つが道路工事。道路は常に交通開放しているため、自動車を通しながらの作業とならざるを得ない。鉄道のように終電車のあとの作業と異なり、利用者にご迷惑をかけることも少なくない。

 例えば国道の舗装でいえば、十年程度で再舗装が必要なため、十キロのうち一キロは毎年工事を行う計算になる。

 これだけでも工事が多いように思えようが、さらに、国道の下には電気、ガス、水道、電話などが埋まっており、その関係の工事も多い。

 だから仕方がない、では済まされない。まずこういった状況であることを市民に対して情報発信を行い、理解してもらえるように努める。

 工事の内容や通行規制期間についての情報も全く不足している。同時に、工事そのものを少なくする努力、工事の時期を集約する努力などもまだまだ不十分と言わざるを得ない。

 こうした改善点を一つひとつ実施していきたい。

(上毛新聞 2004年1月14日掲載)