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◎国際親善の土台固め わが家では来日外国人の民泊をこれまでに数え切れないほど担当してきた。わが家で過ごした外国人の国籍は既に四十カ国を超えている。さまざまな団体の上層部から、外国人の民泊を…という依頼が舞い込むと片っ端から快くお引き受けしてきた。同じ屋根の下で外国人と言葉を交わしていると、お互いに共鳴し合い、共感を覚え、あたかも家族の一員のような雰囲気が醸し出されてくる。 “入り来たる者に安らぎを、去り行く者に幸せを”という草津町の町民憲章は、客を迎える側の心遣いを端的に表している。私ども夫婦も、客の滞在中は自宅でくつろいでいるような安心感を客に味わってもらい、わが家を去る際には、私ども夫婦と知り合って幸せだったという満足感を抱いてもらえるような接待を常に心掛けている。客の喜びは迎える側の喜びでもある。旅券に国籍は書いてあるが、心の中には国境のない付き合いである。 外国人の民泊を担当する際には夫婦の協力が欠かせない。こまごまと客の面倒を見るのは自然に主婦の役割になってしまう。わが家で過ごした客から、お世話になったお礼にぜひわが国にも…とお誘いの声がよく掛かるので、妻が何度も単独で外国の民泊の旅を試みた。私は仕事の関係で常に留守番である。インドネシア人の好意でジャワ島のボロブドール遺跡を訪れたり、ペルー人の案内でアンデス山中のマチュピチュ遺跡や、標高四千メートルを超える高所にあるティティカカ湖を訪れたことがある。またアイルランドやドイツの留学生の下宿を担当した際には、息子や娘がお世話になったお礼に…と、留学生の両親から招待されて、アイルランドやドイツの田舎町で異国情緒を満喫する機会に恵まれた。 私ども夫婦はロータリークラブに所属している。ロータリーは世界中に約百二十万人の会員を擁する国際的な団体である。社会奉仕活動の一環として外国人の民泊に携わる機会も多い。組織の上層部から私ども夫婦に来日外国人の民泊の要請があると必ずお引き受けしている。日本と外国のロータリー会員が個人対個人の草の根の友好親善や相互理解の輪を広げる活動は、例えてみれば巨大な石垣を支える土台固めの作業である。いちばん下の石がいちばん頑丈ならば、石垣全体の安定が保たれるはず…と私ども夫婦は認識している。 長年にわたって培ってきた豊富な体験を生かし、極めて地味で目立たない存在だが、今後もいちばん下のいちばん頑丈な石の役割に徹して、国際親善や社会奉仕のボランティア活動に微力ながら貢献できれば…と夫婦そろって願っている。 外国の客を迎える側は、心の温かさや優しさと同時に、外国の街が一人で歩けるような き強ょう靱じんな神経の持ち主でもあることが理想的…という蛇足の見解を最後に付け加えておきたい。 (上毛新聞 2004年1月7日掲載) |