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◎安心感得られる改革を 現在、年金は国民最大の関心事の一つとなっています。 日本では人の高齢化が進み、総務省統計局の資料によれば二○五○年には人口の36%が六十五歳以上となる高齢化社会が到来すると予想しています。そのため、現行の年金制度でいくと年金財政が破は綻たんしてしまうおそれから、大幅な改革が平成十二年に行われました。その主なものは厚生年金の支給年齢の段階的繰り下げ、および年金額の削減、保険料の増額等でありました。 しかし、改革はするものの実際は予想と違い、厚生年金では平成十三年度で約七千億円の赤字を出してしまいました。原因は不況に伴う労働者賃金の減少、失業者の増加からの収入減、受給者の増加等からの支出増が考えられます。このことから、平成十六年度には年金の見直しが財源問題を起点に国会の議論の焦点になるのは確実です。 年金の存続は国民経済の安定からして、必要不可欠のものであり、異論をはさむことはできませんが、年金の中身については大きな問題点があり、再度議論し良い方向に改善してもらいたいのです。その問題点の一つは、年金の支給年齢であります。 現在の会社等の定年規定は六十歳となっていますが、年金の受給年齢は六十五歳(経過措置はありますが不十分)であり、その五年間が問題なのです。定年退職後、良い条件で再就職できる人や多額の退職金を得られる人は特に問題はないのですが、一般的にいって、定年退職者は希望職種や希望賃金を全面に出すと、ほとんど仕事を見つけることはできません。あるとすれば低賃金の“初年兵”がやるような仕事のみであります。 現在のような不況下では、仕事は皆無といっても過言ではないでしょう。また、会社が倒産して退職金も出ず、多額の住宅ローンを抱えている定年間際の失業者、定年を待たずにリストラに遭い、仕事に就けない人たちはどのようにして生活するのか。現在の年金ならびに雇用保険はこれをカバーしていないのです。 これらの点を考えると、社会保障制度である年金には大きな穴が開いており、これを埋めるのが喫緊の課題なのです。そして、国民の不安をできるだけ早く払しょくする義務があるのです(最近、国もこのことに気付き動き出した)。年金が今以上に改悪され、受給年齢の引き上げや保険料納付者の負担額の増加、さらに年金受給金額の大幅減額等があれば、年金に対する関心度は急激に減少し、年金そのものの崩壊につながることにもなります。 年金は五年ごとに見直しをしていますが、その根幹は常に財源の収支尻がベースとなっています。国民経済の安定ならびに活性化等の角度からも検討を加えるべきであります。国民が不安を持つような改革はするべきでなく、安心感の得られる改革を強く要望するものです。年金制度が良い方向に見直しされれば、日本経済は活性化し、経済浮揚の原動力となることは間違いなしです。年金制度の現実社会とのミスマッチの解消と制度の安定は、千四百兆円が眠る個人金融資産の流動化に火をつけることになります。 (上毛新聞 2003年12月19日掲載) |