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一粒社副代表 片山 哲さん(榛名町中室田)

【略歴】中国黒龍江省哈爾浜(ハルビン)市生まれ。国家公務員、米国企業勤務を経て(株)カタ・エンタープライズを設立。約30年間、33カ国でプロジェクト・マネジャーとして通信衛星地上局の建設に従事。榛名町に一粒社を設立。

最広義の観光産業



◎空港核に一大団地を

 観光産業が世界の輸出産業の中で最大の産業の一つであることから、諸外国も日本も、各地方自治体も観光産業の育成に腐心している。しかし、従来の観光産業の定義域内での発展は期待できない。つまり、出尽くして手詰まりの状態である。

 そこで、最も広い意味での観光事業を新に開発する必要があるが、観光の意味自体が時代と場所によって異なるので、観光産業を定義付けるのは非常に困難である。現に、国連の下部組織である世界観光機構(World Tourism Organization)も定義策定に苦慮し、観光学会でも統一した見解を見出せないのが現状のようである。

 しかし、ここで浅学の謗そしりを恐れず、あえて「最広義の観光産業」の定義付けをしてみると、「旅行者、訪問者とこれらを受け入れる側、すなわちサービス提供者、地方自治体、政府との相互作用関係により発生する、すべての経済事象の総体」ということになろうか。

 見聞するところでは、例えば隣県、隣町の観光客を当県、当村に誘致するといった姑こ息そくな施策に堕しているようだが、今こそグローバルな視点から、外国および外国人をも視野に入れた観光政策を練るべきである。

 観光資源が必ずしも豊富ではない本県においては、ドラスチックな戦略が必要だろう。観光産業展開の要よう諦ていは、一にアトラクション、二にアクセス、三にヒューマン・リソースであると考える。

 そこで、これらを充足させる方策の一選択肢として本県に空港をコアとした観光コンプレックスを建設するのはどうだろう。つまり、国際(不可能ならローカル)空港、イベント・パーク、温泉ホテル、ショッピング・センター、観光グッズ関連商工施設、観光農牧場、国際観光大学、国際観光職業紹介所等をセットにした一大観光産業団地の建設である。

 観光産業団地建設による経済効果は旧来の観光業に止まらず、建設業、物流業、団地外周の諸産業にも及び、さらに雇用の拡大、税収の増加といった波及効果も期待できる。

 先ず通過しなければならない難関の第一は、空港建設に関する国の規制である。航空法およびその関連法令はもろもろの規制を設けているので、これらの規制の適用除外特権を得るため、県が空港(航空法では飛行場という)特区指定を受けることが前提となる。

 次いで資金調達の問題である。近年、東アジア、特に中国、韓国、台湾では富裕層が急肥厚化しており、海外での事業展開を模索しながら眈たん々たんと待機している資金を導入するとか、または、この資金に裏付けられた中国、韓国、台湾等の起業家を励起することにより解決する。

 最後に、観光政策策定において不可欠の理念は「高い経済利益を、社会資産や自然資産の破壊を補償する道具、と考えてはならない(地域観光経営国際会議資料・一九九八年スコットランド)」ということである。

 行政の観光政策形成能力と政策実行力が問われるところである。

(上毛新聞 2003年12月7日掲載)