視点 オピニオン21
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測量士 小板橋 武さん(中之条町中之条)

【略歴】群馬高専土木工学科卒。測研代表取締役。県測量設計業協会理事。JR吾妻線を支援するライブやCD制作などの音楽活動、「あがつま語辞書」発行などの執筆活動を続けている。

地域づくり



◎自分なりの行動を

 地域の活性化を合言葉に、各地で地域づくりの活動が展開されています。しかし、行政側からのお仕着せイメージが先行し、主役であるべき住民の声が反映されにくい状況もあるとの声も聞きます。逆に、苦情だけを言い、行政の責任だと片付けてしまったり、もう手遅れだと、何も言わないで無関心をよそおう住民も少なくありません。行政と住民が互いに、ある意味で都合のいいすみ分けをしてしまっているのです。

 しかし、物の豊かさを求めたバブル経済が崩壊。この深刻な経済状況下で、心の豊かさこそが大切であることに多くの人が気づきました。「そこそこ生きていける収入(仕事)と金のかからない趣味、気のおけない友人がいる地域社会」―これが幸せだと感じる人々が増えてきました。価値観が変わってきたのです。

 人口が減り、活力ある地域という理想の姿からあまりにもかけ離れていく現実を前にすると、行政と住民という従来型の図式ではない、自分なりの地域づくりの行動と、その積み上げ式地域づくりが必要だと感じます。

 その第一歩はまず「自分の地域を見つめよう」という行動です。住んでいるだけで、地域のことは何でも分かっていると思い、自分の住む地域を自分の足で確かめたことがほとんどないのが現実です。地域の歴史や地形などを調べてみると、さまざまな要因が、それなりにからみあって地域が形成されていることが分かります。地域の先達が何を考え、何を地域に残してくれたか伝わってきます。地域づくりは、そういう先達の遺業に何かを少し加え、地域の将来につなぐ作業なのかもしれません。

 次は「自分なりの地域づくりを見つけよう」という行動です。自分なりの視点や手法で、自分と地域とを位置づけることです。これにより、異なった考えや、活動をしている人々と、無理のないかかわりあいが保てます。その結果、地域づくりの行動を広げられるのです。自分自身の言葉で地域を語ることができ、自分と地域とを位置づけることができたら、自分なりの地域づくりが見えてくるはずです。

 そして「地域づくりの展開」ということになりますが、実際には自分なりの地域づくりを見つけることは、そう簡単なことではありません。見つけてから行動するという発想より、とにかく行動を起こし、動きながら見つけていくという動的手法の方がうまくいくと思います。大切なのは具体的な行動です。

 さまざまな働きをからませながら広げていくのが地域づくりです。気のあう仲間と地域を語りあい、地域づくりの核をつくることも大切ですが、画一的な発想とならないように、異なった視点からの、行動を伴った発言を受け止める柔軟性も必要です。自分で行動しながら、そして実際に行動をしている人々と連携しながら地域の将来を見つけていかなければならないからです。

 現状を手遅れとあきらめず、問題点こそ地域づくりの原点だと言えるような、強さを持った行動を。自分なりの地域づくりの第一歩を!

(上毛新聞 2003年11月20日掲載)