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前副知事 高山 昇さん(前橋市六供町)

【略歴】前橋高、東北大大学院文学・経済史修了。1962年県入庁、職員研修所長、広報課長、農政課長、農政部長、総務部長などを経て95年10月から副知事。2期8年を務め、今年10月に退任。

常を疑う



◎大切さ教えられた8年

 重い雰囲気のなかで息がつまる思いであった。九月県議会の最終日、その間、副知事在任八年を振り返っていた。数多くの事柄が必ずしも時系列でなく、次々と影絵のように現われ消えていった。登壇の機会を与えられ、退任のあいさつを述べた。

 「私は小寺知事のこの上ない信頼を頂き、議員各位の支援を賜わり、仕事に集中することができたことを幸せに思います。心から感謝申し上げます。今は『燃焼した』、そんな想おもいがしております。ただ私がその事務を引き継ぐ後任者が決定されていないことは、現任の副知事として、私の心情として残念に思っております。私を支えてくださった県民の皆さま、そして共に仕事をしてきた職員にお礼申し上げます。今後は県民の一人として、県民生活の幸せを願い、小寺県政の発展を祈ってまいりたいと思います」

 あらかじめ用意したわけでもなく、気持ちを率直に述べた、と思っている。

 この八年は何だったのか、と自問する。知事の政策・思想のなかで自らの役割を果たしてきたと思っている。それを超えることも枠外に出ることもなかった。常に知事の言葉の多くを引用して話してきた。それに異を唱える人には自分の言葉で説明し、理解を求めてきた。知事の最大の理解者であると誇りにしてきた。

 県政を揺るがす不適正支出の問題が表面化したのは、副知事に就任して一年を経過したときである。知事を中心に改革に積極的に取り組み解決に向かったが、職員の理解・協力も大きかったのではないかと思っている。職員と一緒に仕事をしていることを実感した。知事の考え方を十分に承知して幹部職員が仕事を進めることは当然に重要であるが、同時に職員に顔を向けていることが職員の意欲と意識改革に不可欠であると考えている。

 多くの県民・団体の方々から意見をお聞きし、語り合い、一緒に行動する機会に恵まれた。社会は小さく複雑に動き、私たちの生活もゆっくりと変化してきている。その背後にあるものを確実に把とらえ、時代の流れを感じとることに努めてきた。県民・団体と親しく接することが「常を疑う」ことの大切さを教えてくれたと思っている。この「常」を成立させている条件は一体何か、次にくる「常」はいかなる兆しを今の中に持っているのか。

 秋の紅葉の美しさの中に、次に育つ芽がその奥深いところにある。そんな秋が大好きである。

 「地上にもともと道がない、多くの人が歩むから道ができる」(魯迅)。県民と共に前進ある県政、地方自治の原点であると思う。多くの課題と事案に向かい合ってきた八年であった。それだけに長くも短くも感じている。引き続き取り組むべき課題も多く残されている。これまでと同様に、時代を大きく把え、将来をしっかりみつめる県政であってほしい。県政の発展を心から願っている。

(上毛新聞 2003年11月12日掲載)