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◎生き方変えた出会い 今年も紅葉の映える十一月がやって来ました。秋たけなわのこの季節になりますと、私は今から五年前の平成十年十一月九日を思い出します。 その日は、渋川市の西部、明保野の地で、私たちの長年の願いであった「渋川市複合福祉施設まつぼっくり」の落成式が行われた記念すべき日だったのです。新装なった施設をとりまく木々が、すっかり秋色に染まった、美しい秋晴れの日でした。 市長さんをはじめ、市内の各関係機関の方々、大勢のご列席をいただき、施設門出の祝福を受けた日でした。 ところで「渋川市複合福祉施設まつぼっくり」について、若干の説明をしますと、当時、市内にあった三つの団体が、それぞれ異なった福祉施設の設置を市にお願いしていたところ、市が同時に同一の場所で実現することになり「複合福祉施設」という、県下でも珍しい名称がついたのです。その三つの事業の中の一つが『いぶき』であり、運営主体は、知的障害(児)者とその親、並びに会の趣旨に賛同くださる人たちで構成している「渋川市手をつなぐ育成会」なのです。 私たち、知的障害を持つ子の親は、自分の子の将来に常に悩みを持ち続けております。特に義務教育終了後は、大変だと聞いておりましたので、子供たちが卒業後、一般就労ができなかった時、すぐにでも受け入れてくれ、その子の能力に合った仕事をさせてくれるところが欲しいと、長い間、渋川市に要望し続けてきました。その願いがかなって『まつぼっくり』の中に、定員十人の小規模福祉作業所『いぶき』が誕生したのです。 あれから五年の歳月がたちました。現在、私の夫が「渋川市手をつなぐ育成会」の会長を務め、『いぶき』の所長を兼務しております。私は『いぶき』の自主製品であるクッキーづくりを担当し、商品企画などに取り組んでおります。 では、私は初めから福祉活動に積極的にかかわっていたのかと申しますと決してそうではなく、私の福祉に対する考え方を大きく変えたのは一人の人との出会いでした。 私は結婚間もなく長女を出産しましたが、娘は生後六カ月でてんかんを発病。その後何度となく病院の入退院を繰り返す生活を送り、ある期間は、通院と保育園へ通園のため前橋に移り住んだこともありました。 そして就学期を迎え、渋川へ戻ったのですが、近所に友人もなく私は孤立状態の日々を過ごしていました。そんな時、積極的に声をかけ励ましてくださったのが、近所の米とうつわを扱う店のオーナー夫人、飯塚教子さんでした。障害をもつ娘のこと、その母である私自身のことをとても深く理解してくれたのです。そして『いぶき』の設立当初から現在に至るまでさまざまな方面から支援をしてくださっています。この飯塚さんとの出会いがきっかけとなり、私の生き方は大きく変わりました。 その後も多くの方々との出会いがありますが、その都度、人との出会いの大切さを痛感してまいりました。 (上毛新聞 2003年11月10日掲載) |