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◎文化財を発信源に 景気低迷、少子高齢化の昨今、希薄な地域社会が生み出すさまざまな事件により、弱者であるお年寄り、子供が被害に遭っています。地域としてすべきことは何か。行政依存、行政主導でなく、地域が知恵を出し、汗を流し地域主導で地域づくり、人づくりに向けた取り組みが必要です。 地域には昔から受け継がれているもの、時代背景により途絶えたものなど、いろいろなものがあります。民俗芸能、民話、昔の子供たちの遊びなども数多く継承されています。このように、地域にはたくさんの素晴らしい素材があります。「このような素晴らしい素材を活用し、地域から笑顔を発信しては」と思います。焦らず、ゆっくり、ゆるやかに取り組むのが肝要と思います。 文化財を発信源とした取り組みを紹介します。 赤城村の上三原田には、素晴らしい地域づくりの素材があります。農村歌舞伎舞台です。 江戸時代からもてなしの心で、農村歌舞伎を五―十年間隔で公演していました。男衆が舞台をつくり、女衆がお客の接待と、表舞台に出ず、縁の下の力持ちとして対応していましたが、高度成長期に公演が途絶えます。 景気低迷、少子高齢化の現代、地域は何をすべきか。再三会合を開き酒を酌み交わし出た答えが、「文化財を発信源に、住んでみたいと思うようなそんな地域にしよう」でした。舞台の復活です。 平成七年に公演復活の機運が高まり、地域住民が一丸となって舞台操作伝承委員会を結成しました。歌舞伎の研修、舞台操作の練習、舞台づくり、さらに、舞台紹介本(漫画で知る日本一の廻まわり舞台と太郎少年)を刊行します。 平成八年、伝承活動の成果を発表するため、国・県・村の協力を受け公演しました。 さらに、民間篤志家の協力をいただいて、毎年公演し、復活の集大成として平成十三年、国民文化祭ぐんま2001「農村歌舞伎inあかぎ」を二日間開催しました。公演および舞台見学では一万二千人以上の来場者がありました。 上三原田には多くの職人さんがいます、手先が器用で裏方に徹する男の心意気があり、それを支える肝っ玉かあちゃんがいたからこそ、毎年公演することができたと思います。最高の舞台復活劇です。 今回の舞台復活劇において、見逃すことのできないことがあります。中学校による歌舞伎部の結成です。平成十年の初公演から、毎年公演しています。この活動の中から多くの素晴らしい体験、思い出が生まれました。地域が変わり、子供が変わり、学校までも変わりました。 子供には、多くの経験をさせるべきと思います。学校の主役は子供たちです。地域の主役も子供たちです。学校が、地域が知恵を出し、二十一世紀を担う子供たちのために何をすべきか。かけがえのない子供たちの未来のために。 きょう八日行われる農村歌舞伎inあかぎ(かぶきはともだち)のご案内をいたします。午前十一時から「絵本太功記十段目尼ヶ崎閑居の場(子供歌舞伎)」、午後一時半より「助六」「あんまと泥棒」、午後三時半ごろ終了の予定です。朝早くご来場くだされば舞台操作を見られますし、当日の無料自由席も用意していますので大勢のご来場をお待ちしています。 (上毛新聞 2003年11月8日掲載) |