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前橋市市長公室交通政策課課長 鈴木 和明さん(前橋市勝沢町)

【略歴】前橋商高卒。1971年、前橋市に入職。同年、水道局総務課に配属され、90年に前橋市都市整備振興公社へ出向。95年から交通対策課、工業課などを経て、今年4月から現職。

交通安全と事故防止



◎日ごろから話し合おう

 通勤では路線バスを利用していますが、通勤以外での目的地への移動は自家用車を利用することが多く、私にとって自家用車は欠くことのできない移動手段の一つとなっています。移動分担率の92%を自家用車が占めている本県では前橋市を含め、県内の全域でも同じような傾向にあると思います。

 日常的に自動車を利用していることから、交通安全には十分配慮しているつもりですが、以前ラジオの放送に気を取られ、横断歩道を渡り始めた歩行者に気付くのが遅れ、横断歩道の手前で急停車し、歩行者を驚かせたことがあります。この時以来、安全運転には以前よりも増して注意するように心掛けています。

 県警が発行する交通年鑑によりますと、昨年の一年間に前橋市内では三千六百三十四件の交通事故が発生しましたが、この交通事故の違反別割合では、一時不停止や速度違反などよりも安全運転義務違反が圧倒的に多く、全体の53%を占めています。

 「安全運転の義務」は、道路交通法第70条に定められており、その内容は「ハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通および当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」と規定されています。

 この違反による事故は、認知ミスや判断ミスなどのちょっとした不注意により発生するもので、運転の経験を問わず、すべての運転手が引き起こす危険性を持っています。

 先日、信号機のない交差点を児童が一人で横断するのを見ました。乗用車との距離は二百メートル以上もあり、安全に横断できる距離でしたが、児童はしばらく待ち、乗用車が停止したのを確認してから渡り始めました。この児童の安全確認は、家族から横断歩道を渡るときは自動車が止まってから渡るように指導されていたと理解するとともに、この家庭では日ごろから交通安全について、話し合っていることがうかがえます。

 前橋市では、幼稚園や保育所の幼児から小学校の児童、中学校の生徒を含め、各種の交通安全教室を警察署や交通安全協会とともに実施しています。

 幼稚園や保育所では、各施設ごとに年三回の交通安全教室を実施しており、特に三学期は年長組の児童と保護者を対象に、自宅から入学予定となる小学校までの通学路を念頭に置いた歩き方の指導を行っています。発育課程の児童が動体視力や自動車との距離感を理解するのには時間がかかりますので、家庭で繰り返し安全確認の復習が必要となります。

 今年の九月までに前橋市内では三千三百十六件の事故が発生し、昨年の同時期との比較でも約20%の増加となっており、これから繁忙となる年末に向け、交通事故の増加が懸念されています。

 交通事故は被害者はもとより、加害者にとってもそれぞれの家族を巻き込み、精神的にも非常に厳しい状況があるということを理解しなければなりません。この悲惨な交通事故の防止と交通安全の励行について、家庭や職場の中で話題にしてほしいと思っています。

(上毛新聞 2003年11月4日掲載)