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◎自立した日々を楽しく 「おとしよりとハンディキャプをもった方の自立のための、施設を建設しています」。白い大きな表示板が目に留まります。夏まつりのおはやしや打ち上げ花火の余韻を打ち消すように、建物の解体工事の大きな音と地響きがしばらく続きました。来年の春、桜の花の咲くころのオープンを目指し、建物の基礎工事が始まりました。 町の中を南北に足尾・日光へ向かう国道122号が通り、宿場町として栄えた大間々の町。少し離れた所で生まれ育った私は、町へ買い物に来るのがとても楽しみでした。けれど歯の治療はにが手でした。そして、私の子供たちも私の時と同じように、ご褒美を楽しみに湯本歯科医院にお世話になりました。 町の中心に位置するこの場所は、とてもにぎやかな商店街でした。湯本先生が温かく適切な治療を続けてこられた診療室を閉じられたころから、町は少しずつ様変わりをしてきました。郊外に大型店ができたことや、後継者の問題などで、シャッターを閉じるお店も増え、少子高齢化も進み、町の中は寂しささえ感じます。そのような時の流れの中で、多くの人たちの歯の健康を守ってくださった湯本先生が亡くなられました。生前から、地元の人たちや町の福祉のためにと考えられていたことを受け、ご遺族が土地、建物をすべて町に寄贈されたのです。亡き奥さまが愛用された茶道のお道具も「使っていただければ…」と、思い出の品とともに湯本先生の優しいお心が伝わりました。 どのような使い方が先生のご遺志に、ご遺族のお気持ちに応えられるかを、行政の方のお話を聞き、福祉関係の人たちの意見も聞いていただきました。そして、介護予防複合施設としてスタートする方向で決まりました。現在、六十五歳以上の方が四千七百五十七人、高齢化率21・4%の大間々町。お年寄りが心身ともにお元気で、自立した日々を楽しく過ごすための施設となります。相談室や機能訓練・軽スポーツのためのホール、そして食事の自立のための調理実習室も備えて、すべてバリアフリーの施設になる予定です。お年寄りだけの世界でなく、ハンディをもった人も、お年寄りとコミュニケーションをとりながら自立を目指し、お互いの理解を深めることができる施設でもあるのです。 かつてのにぎわいを取り戻すことはできなくても、優しさや思いやりに包まれた人々の集う場が、町の中心に生まれることは、湯本先生もきっと喜んでくださるのではないでしょうか。 今、町は合併問題で揺れています。どのような結果になっても、最初に弱い立場にある人に温かい手を差し伸べる町に、市になってほしいと思います。子供たちも十年前の半数以下になってしまいましたが、中学生の福祉への感心がとても高く、ボランティアを実践している立場からお話をさせていただきました。その時の生徒さんの真剣なまなざし、質問をする姿にうれしさと心強さを感じました。「福祉」を理解し、担ってくれる若い力の育つことを期待したいと思います。新しい施設のオープンの日への思いと一緒に…。 (上毛新聞 2003年11月3日掲載) |