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◎年齢に応じた適量を 現在、世界一位の長寿国になった日本の平均寿命は八十歳、「敬老の日」には百歳以上の人が全国で二万人を超えました。平均寿命はその国の社会情勢の影響を受けて変動するといわれますが、人口比率で六十五歳以上の人が二〇五〇年には32%に達し、ほぼ三人に一人の割合になると予測されています。 今後の高齢化社会には戦後の音楽、絵画、ファッションや生き方など幅広い分野で文化を創造し、時代をリードしてきた日本の代表的な世代である「団塊の世代」が入ってきます。経済的にもリタイアした後の人たちを対象にした市場は一部では八兆円ともいわれ、「元気産業」の発信源になると期待されているそうです。 日本では六十五歳以上を老人と呼んでいますが、六十歳代の方の訃報(ふほう)に「あの若さで…」という言葉をよく耳にします。米シカゴ大学の老人学の権威のベルニーズ・ニューゲートン氏は七十五歳までは「ヤング・オールド」という呼びかたを提案されています。個人差はありますが、この年齢では脳の老化も2%未満で知的機能はほとんど落ちないそうです。リタイア後に趣味に生きたいと思う人が多い半面、今まで仕事一筋の生活を過ごし趣味も特にこだわらない人や、「何らかの形で社会に役立ちたい」という勤労奉仕意欲に燃えた人、世代を超えたコミュニケーションづくりに励む人などさまざまな形での社会とのかかわり方、生き方が増していくと思います。 「いつまでもあると思うな」の言葉にはいろいろな言葉を引用して反省してしまいますが、人生の折り返し点に入ると、残された時間の中でいかに健康でありつづけるかということは誰もが抱く共通の関心事であると思います。昔から適度の飲酒が健康上有益で長生きに役立つ説があり、長寿の方が晩酌を楽しむ習性もよく伝えられています。おいしい料理とおいしいビールを飲んだときに健康に感謝し、幸せを実感することがよくあります。 一般に高齢になるほどアルコールの代謝能力が低下し、酒量も減少します。代謝機能が低下したことを自覚せずに若い時からの酒量で飲酒を続けていると、肝臓障害や依存症になったり、深酒は老化を加速するといわれます。年齢相応の適量を心掛けることが、お酒と長く付き合うコツです。アルコールの歴史の中でもビールは五千年以上も飲み続けられ、古代には日常的に飲む以外に薬としても用いられていたこともあります。キリンビール基盤技術研究所では昨年、ビールと生活習慣病に関する研究を学会で発表しました。発がん予防活性、抗糖尿病、抗肥満活性、骨粗しょう症予防活性等々で製品となったビールが人体に与える影響を本格的に報告したのは世界でも初めてであり、大きな反響がありました。また、アメリカのがん学会では注目発表の一つとして大きな関心を呼びました。 足腰や物忘れや五感の衰えといった老化現象への自身の受け止め方や対処方法の違いによって個々の老いの姿は変わってくると思います。精神的、肉体的にもその好影響を受ける条件は自身がつくるものであると思います。 「小さなことでも始めることを忘れず、続けていく限り老いはない」 (上毛新聞 2003年10月24日掲載) |