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おおた八木節だんべえ踊り協会会長 飯塚 敏正さん(太田市新井町)

【略歴】東京農大卒。JA太田市勤務。仲間とともに太田市オリジナルの「おおた八木節だんべえ踊り協会」を設立。日系ブラジル人親子を支援する九合NPOヴェルジの会の代表も務める。

穴の開いた葉っぱ



◎安全を示すキーワード

 世の中では衆議院の解散やダイエー対阪神の日本シリーズの行方でにぎやかだ。

 でも、周りを見渡すとコンバインが動き出し、朝夕もめっきり冷えて実りの秋の到来だ。

 今年は冷夏の影響で米不作となり、コシヒカリを中心に値上がりとのこと。そのせいで円高なのか!?

 さて、群馬県は全国に先がけて県条例を制定して、安心安全な農産物の生産・流通の確立を目ざしている。

 全農ぐんまでは七月から施肥防除支援センターを、県では十月から食品安全検査センターを設置して農薬の残留検査体制を整えた。

 また、JAでも独自の残留農薬検査やトレーサビリティー(履歴追跡可能性)の根幹となる栽培記録の記帳運動を展開している。

 わがJAでも定期的に記帳指導を行い、適正な農薬の使用などのチェックをしている。

 しかし、その実態は今まで記帳する習慣のない農家からはブーイングである。そのために、記帳を怠ったり、適正使用に違反をした農家には生産物の出荷停止をすることにした。

 今までトレーサビリティーという観念が農業になかったことが不思議なくらい。もっと農家は自分たちが毎日営んでいる農業の意義を認識して、自分たちを厳しく律して行くべきだ。

 これが守れないようでは消費者の信頼を勝ち取れないばかりか、安価な輸入農産物に打ち勝つことなどできない。余談になるが、私は農産物はどんどん輸入すればよいと思う。米も減反などと言わず、どんどん作らせればよい。その結果はわれわれ日本国民が甘受すればよいのである。

 ところで、農薬の適正使用を徹底させる毎日で気になることがある。「穴の開いた葉っぱ」が今までになく目立つ。これは元気な虫たちがおいしい葉っぱを食べているからなのだ。

 でも、市場へ出荷すると、これらはB品かC品となって安く取引され、揚げ句に売れないから出荷しないようにとのこと。アレッ!! チョット待った。この葉っぱたちは、農薬が適正使用されているのに。不思議だよね。これが、日本の消費者の実態かな。

 そうなんです。農薬を適正使用したり、減農薬に努めると葉っぱに穴が開いたり、たまには虫もサービスに入ったりします。この葉っぱたちこそが安全なんです。

 現在、日本の消費者の嗜(し)好は健康・安全・安価であると思います。これに群馬県の農業も対応していかなくてはなりません。しかし、「安全」だけ考えても先ほどの葉っぱのような消費者の間違った認識が存在します。このことを消費者に認識させる努力が非常に大切です。

 このことが消費者に理解され、受け入れられないと安全という農産物が供給できなくなり、農家は立ち行かなくなってしまう。

 「穴の開いた葉っぱ」は消費者にとっても農家にとっても大切なキーワードではないでしょうか!!

 このキーワードの浸透のため、私は最大の努力をしたい。ガンバロウ!!

(上毛新聞 2003年10月16日掲載)