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◎和を考えた団地造りを シックハウス症候群を予防するために改正したという建築基準法や住宅性能表示制度などは、役所が責任を逃れるような法律、制度ではないだろうか。 化学物質を含んだ建設素材には、ランクが表示されているが、今の世の中、自然素材でも化学物質が含まれているものもある。たとえ、法律に基づく化学物質がゼロであっても、アレルギーを起こす成分を含んでいたりするからだ。それは漆であったり、松であったり、草だったりする。 換気設備で一日何時間といった基準の基でランキングされているが、換気を備えれば、ホルムアルデヒドはゼロになるとでもいうのだろうか。 職人の造る住宅は、いつも百点を取らなければ、お金はもらえない。親せき同様なつながりで、まず安全性を考えて住宅を造ってきた。規制をすれば、安全は守れるといった考えは間違いだ。昔の技術者は誇りと責任を持って、物をつくっていた。その責任を他になすり付けるような法律だったら、問題といわなければならない。 職人の世界には協調、共生という気質があり、常に愛情を持って家造りに臨んだ。そうした心がなくなれば、仕事ができなくなる。 先日、JRの新幹線駅である「安中榛名駅」前の広場設計案展示会場を訪ねた。それは、夢には程遠いもので、温かみのないものだった。二、三点はユニークなものがあったが、総じて、そんな感じだった。駅前広場の設計には、まさに協調と共生という心が生かされていなければ、分譲される団地全体の和がなくなる。 分譲地にある、建設中のモデルハウスにも足を踏み入れてみた。モデルハウスとして使った後は販売するというが、夢を追い過ぎた勝手なデザインが目に付き、統一性に欠けていた。 協調と共生、遠くの親せきより近くの他人といった意識が欠けてきた今日において、どんな団地を造っていけばいいのだろうか、とあらためて考えさせられた。たとえば、高層マンションや集合住宅が集まったような団地では、本当の人間関係が構築できるのだろうかと。 現在、NPO(民間非営利団体)のような活動があるが、隣組のような関係はなくなり、残ったのはPTAであるとか老人クラブといった形でしかなく、これで本当の人間関係、さらに地域がつくられていくのだろうか。今こそ、和のとれた地域、自治体が必要ではないだろうか。そうしたことを考えた団地造りが求められる。 安らぎと憩いを求め、安心して家に帰れる環境をまず造りたい。田園都市とするからには、理想郷を追求したい。そうした都市計画をいま一度、考え直してほしいと思う。 (上毛新聞 2003年10月2日掲載) |