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◎役立てたい日本の経験 八月下旬にインドネシアに一週間、九月中旬に中国に一週間、仕事の都合で滞在する機会を得た。インドネシアは四回目、中国は六回目の訪問である。 三十二年前のインドネシアはまだ経済発展以前の段階であり、とにかく「暗い国」という印象であった。「石油資源」を基礎とする経済発展により、二回目以降次第に「明るさ」を増し、三年前と今回の訪問では国としてだけではなく庶民の経済力の拡大を感じた。政治・民族問題では大きな課題を残しているが、中国、インドに次ぐアジア第三の大国(人口二億人)としての存在感を秘めているという印象を持った。 中国については、改革開放以降の経済発展が進んでからの訪問であるが、毎回訪問するたびに「明るさ」と強い「エネルギー」を感じている。中国も政治・社会・経済の上でそれぞれ大きな課題を抱えており、決して将来は平坦(たん)ではないが、バイタリティーに溢(あふ)れているという点ではインドネシア以上のものがある。 両国とも訪問地は首都・大都市とその周辺であり、地方(僻=へき=地)は訪れていないので、それぞれの一部分を覗(のぞ)き見たにすぎないが、それらの印象とこれまでに得た知識とを総合して得た感想は、両国ともに共通するところがある。それらを自分の専門分野に引き寄せてまとめると、以下のようなものとなる。 (1)近年、両国とも変化が早く、近代的生活スタイルの普及とともに、世代間による物心両面の格差が急速に拡大していること。 (2)その背景にあるものは、急速な経済発展とそのグローバル化の影響であり、その現象は先進国と一体であること。 (3)もう一つ見逃せない社会変化として、人口構造の変化と人口移動の激化を指摘できる。この変化はこれまではゆっくりと進んできたが、今後は社会生活に対して急速で構造的な大変化をもたらすものと予想される。 以上のことは、かつての日本の同様の現象を追いかけるものである。これらの点は今後の東アジア・東南アジアの未来を見通す上で基本的な観点であり、日本人はもっとこのことに敏感にならなければならないと感じた。これらの地域の課題は日本が抱えている課題と多くの共通点があり、日本人は過去の成功体験をただ誇るのではなく、謙虚に振り返って自らの経験を客観的な教材として役立て、これらの地域社会(国家・民族)との共生の道を探っていかなければならないと思う。 そのためには、親の世代は子の世代に対して「経済成長を通じて体験してきたことを冷静に評価し、それを土台として新しい成功を目指す」という視点を持って、積極的に語りかける必要があると感じる。 (上毛新聞 2003年10月1日掲載) |