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まちづくりコンサルタント・コモンズ主宰 庭山 由紀さん(桐生市新宿)

【略歴】日本大大学院博士後期課程修了。農学博士。一昨年はオリジナルカレンダー「桐生楽暦」や目的別地図「桐生楽地図」を製作するなど快適な桐生暮らしを追求。県一郷一学の講師なども務める。

親に養育されない児童



◎在り方を検討すべきだ

 この「豊かな」時代の中で、少子化が問題となっている今、親に養育されない児童が数多く存在し、また増加傾向にあることに、私はものすごく驚いた。昔読んだ漫画「キャンディキャンディ」に出てくるような施設がいまだにあるなんて…。ホントに世間知らずな私である。

 実親に養育されない子どもは、施設で育つか、里親の元で育つかということになるのだが、実親に育てられない子どもの多くは、施設で養育されるのが日本の現状のようで、施設養育率が、いわゆる先進国といわれる国々の中では、ダントツに高いようだ。それでも最近は「子どもに家庭を」という考え方から、また施設が満杯状態ということもあって、里親制度が推進されている。

 里親制度は、養育里親、短期里親、養子縁組、そして最近本県でも始められたファミリーグループホームという制度に大別できる。養育里親は養子縁組を目的とせず、親が子どもを引き取れるまで、また子どもが十八歳になるまで育てる里親で、今最も求められているという。短期里親は、親の病気や事故などで一時的に養育できなくなった子どもをできるだけ同じ地域に住む人が短期的に預かる地域密着型の里親。養子縁組は、字のとおり養子縁組目的の里親である。新しい制度のファミリーグループホームは、家庭で複数の里子を養育するもので、これは里親としての経験を積んだ人でないと難しい。また、「ふれあい里親」というシステムもあり、夏休みや年末年始などに数日間子どもを預かることもできる。

 少子高齢化時代で頻繁に問題とされるのは、高齢者の介護や保証・権利の問題であったり、出産可能な年齢の女性の社会進出を伴う出生率の低下の問題として取り上げられることが多い。高齢者は大人であるから、自分たちで意見や要望を表現することができるし、また高齢者も多く、高齢者予備軍もたくさんいる(もちろん、私もその一人だが)。よって、高齢者に対するケアは、改善すべきものもあろうが、自分たちで選択できる。しかし、もちろん虐待され、心身的に傷を負うまでになってから問題とされることはあっても、通常子どもは自分たちの問題を社会に伝えること自体が難しく、与えられた生活環境の中でしか生きられない。特に実親と離れて暮らさなければならない子どもにとって、どんなに先生方が親身になろうとも、自分の身は自分で守るしかない。生活の本拠、無条件で甘えられる愛情の本拠なく生きていく術(すべ)を模索し、得ていくしかない彼らの問題は深刻である。

 実親が育てられない子どもについては、どう育つのがその子どものためになるのか。特に社会的にどうすべきなのか、その、在り方を検討すべきではないだろうか。

 「里親」「里子」に関心を持った私に、「かかわらない方がいい」とアドバイスをくれる方もいた。大きなお世話である。先日「ふれあい里親」で三日間、かわいい男の子と過ごす機会に恵まれたが、体験してみてその難しさも実感し、いまだに気持ちの整理がついていないことも白状しておこう。

(上毛新聞 2003年9月25日掲載)