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松島税務会計事務所所長 松島 宏明さん(桐生市相生町)

【略歴】明治大卒。1985年に桐生へ戻り、10年前に会計事務所所長に就任。桐生JC理事長、県小中学校PTA連合会長、生涯学習桐生市民の会会長などを歴任。現在は桐生市教育委員を務める。

二学期の始めに



◎子どもは大人の投影

 いつもの年より長く続いた梅雨がようやく明けたかと思ったのもつかの間で、盆休みはずっと雨。恨めしそうに空を眺めながら過ごしたのは、かなり昔にもあった気がする。あのころ流行(はや)った歌が今年もどこからか流れてきた。

 子どものころから毎年夏は短く、その記憶の中に幾つもの思い出の場面が凝縮されている。昔からの夏のイメージといえば青い空と白い雲、強い日差しに蝉(せみ)の声、夜になれば花火や祭りの屋台の明かりが思い浮かぶ。それが一転、九月ともなれば、すべては過ぎゆく夏の記憶といったところだろうか。どこかで寂しさのただよう、この月は残暑さえなぜか力なく感じられる。

 そんなある日、久しぶりに始まる学校に向かう生徒たちを見ていた。期待はずれの夏でも子どもたちは日焼けで浅黒くなり、いつもと変わらず歩き出している。そういえばあのころは、新学期が待ち遠しくもあり気が重くもありと、複雑な気分だったのを思い出す。顔見知りのおばさんだろうか、おはようと声をかけている。久しぶりではにかむ子どもも、視線をそらしがちに挨拶(あいさつ)をした。最近子どもたちが変わったとか、行動がよく理解できないといった報道が目や耳につくが、何がどう変わったというのだろうか。たしかに便利さや快適さを追い求めることから、昔とは違った社会となった側面があることは否定できない。それと引き換えに、なくしてきたものが多いのはむしろ大人の方だろう。子どもは、いつの時代も大人の投影のように思える。

 最後のチャンスとばかりに蝉が鳴き始めた。この間、東京へ行ったときも蝉の声を聞いた。東京のオフィスを訪ねると、どこでも宅配のミネラルウオーターのボトルが目につく。あの蝉も含めて、地球自体がバランスを取りながら成り立ってきたのに、どうやらわれわれ人間は極めていびつなバランスで生きてきたようだ。人間一人ひとりが自分自身のバランスを考え、取り戻す必要があるのかもしれない。もちろん精神的にも。

 相変わらず中小企業(特に地方)を取り巻く環境は厳しい。一番打撃を受けているのはマインドだろうか。国や地方が打ち出す金融政策などは、必要なところに届かない仕組みになっていると、耳にすることが多い。経済とは経国(世)済民の略で、国(世)をつなぎ民を救うという意味だと聞いていた。今、この国に本当の経済活動がはたしてあるのか、疑問に思ってしまう。やはり、子どもはいつの時代も大人の投影に違いない。

 夢を見ていたわけではないだろうが、ほんのいっとき思いを巡らすうちにも、人間の頭の中には、たくさんの思いが浮かぶものだと感心してしまう。子どものころのイメージーでは、やはり九月は二学期のスタートということになり、一つのきっかけにするにはいい時期のように思う。もうすぐ、体育祭や合唱コンクールといった催しも始まる。

(上毛新聞 2003年9月14日掲載)