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◎軽犯罪の取り締まりを 先日、夜明けも近い午前三時半ごろ、けたたましい電話の音で目が覚めた。町内で火災が発生したので、区長をしている私に早く現場に来るように、という電話であった。半分寝ぼけていたが、急いで身支度をして家を出た。火災は半焼の状態で隣への延焼は免れたが、火元の家は使用不可能であることは一目で分かった。 数日後、警察から連絡があり、火災の原因は外国人による放火であることが判明した。犯人逮捕のきっかけは、別の車両盗難から足がついたということで大きなショックを受けた。まさか、高崎でこんな事件が起きようとは思ってもいなかったことで、一瞬、唖(あ)然としてしまった。 高崎警察署管内の刑法犯罪の発生状況を見ると、平成十四年の発生件数は六千八百四十九件で、平成十三年中と比べて千五百五十五件のプラスで、平成十三年を大幅に上回っている。このままでゆくと、平成十五年はかなりの増加が予想される。犯罪別に見ると、窃盗犯が全刑法犯罪の約80%を占め、中でも街頭犯罪の乗り物盗・車上狙いの増加が目立っている。 最近、マスコミを通じて凶悪犯罪のニュースが連日のように伝えられているが、現在、三十五万人といわれる不法滞在の外国人がわが国におり、凶悪犯罪の温床になっているという。東京都民の最大の関心事は治安の悪化であり、特に中国から来た蛇頭が東京をベースにして、さらに地方に広がり、暗躍し始めている。その凶悪な手口はまさに犯罪を変えつつある。 犯罪の原因は単に警察機能の問題ばかりでなく、入国管理の杜撰(ずさん)さに起因するものでもある。一つの空港しかない香港に五千人の入管職員がいるのに対して、日本全体で入国管理官あわせて二千五百人しかいない。しかも、入管は法務省、密航船を取り締まる海上保安庁は国交省、と役所の壁で仕切られ、連携がとれていない。入国管理と不法滞在の摘発は警察のやる仕事として、もっと警察官の増員を図るべきではないか。刑務所・拘置所の絶対的不足が軽微な犯罪を見逃し、再犯を生む土壌になっているとも考えられる。かつてのイタリアのように、マフィアが要人の子弟を誘拐し、政府を脅迫するといった事態になってからでは遅い。常日ごろから危機管理意識を持っている必要がある。 十数年前まで、ニューヨークは暗黒街と呼ばれていたが、最近では最も安全な都市として名実共にその姿を一変した。それは、当時のジュリアーニ市長の功績が大きかった。犯罪取り締まりに関して、ジュリアーニ市長が採用した基本的な考え方は「BrokenWindowsTheory(破れ窓の理論)」。犯罪学者ジェームズ・ウィルソンやジョージ・ケリングの理論として「石で破られた窓をそのまま放置しておくと、誰も関心を持っていないだろうと考え、次は扉を壊し、結局は建物全部を占拠してしまう」―。すなわち、軽微な犯罪でも放置しておくと、結局は凶悪犯罪へと発展するという考え方だ。ジュリアーニ市政は、まず軽犯罪の取り締まりを徹底的に強化したといわれている。これは冒頭の町内で起きた放火事件と合致する点が多い。何度か侵入を試み、結果的に火災という事件につながることを、われわれも肝に銘じるべきだと痛感させられた。 とにかく、犯罪のない安全で安らぐ暮らしができるよう、住民一人ひとりが、お互いに連携をとりながら楽しい町づくりをしよう。 (上毛新聞 2003年9月12日掲載) |