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県高齢者生活協同組合専務理事 大塚 肇さん(前橋市広瀬町)

【略歴】中央大法学部卒。医療事務会社社長、県高齢者生活協同組合設立準備会事務局長を経て2001年、組合設立と同時に専務理事に。日本労働者協同組合連合会センター事業団群馬事業所長も務める。

高齢者の主張大会



◎聴衆も含め感動できる

 高齢者の積極的な社会参加を応援するため、全国各地で高齢者生協等が主催して「高齢者の主張大会」が開かれています。

 青年に若々しい主張があるなら高齢者にも人生の経験に裏打ちされた高齢者ならではの主張があるはずです。それを文書での発表にとどめず、聴衆を前にして弁論大会という方式で主張するのがこの「高齢者の主張大会」です。

 群馬県でも、一昨年の「敬老の日」に始まり、今年で三回目となります。今年は八月末まで原稿募集を受け付け、書類選考を通った七人が九月七日に前橋市総合福祉会館で元気に主張することになっています。

 主張の内容は自由題であるため、実に多様です。戦争体験と平和の訴え、故人との思い出、健康維持の秘けつ、里山の保全運動、町づくりへの提言、地域でのボランティア活動など。

 群馬県では、主張の際のパフォーマンスも認めていて、第一回大会では、前橋市の佐京武数さんが「高齢者の健康づくりと弓道」を主張、壇上で弓を引いて見せて弓道歴四十年の見事な技を演じました。また、年々応募者も増えており、第二回大会では二十人を超えました。競争を制して優勝した館林市の橋本十一郎さんは「これからの人生どう生きようか」と題して、猛烈に利益追求の仕事をしてきた会社生活を振り返りつつ退職前後の揺れ動く気持ちと介護ボランティアとして汗する今を熱く語りました。

 聴衆には若い人も多く、「今まで高齢者というと、弱い、遅いなど否定的なイメージをもっていたが、大会で高齢者の元気で個性豊かな話を聞いてそのイメージが変わった」と感想アンケートに答えた方もいました。また、高齢者で参加された人の中には、「私も前からしてみようと思っていたボランティア活動に一歩踏み出そうと思う。来年は体験を発表したい」と主張者の話に刺激を受け勇気づけられたと興奮気味に語る人もいました。これらは、壇上で演ずる姿が見える弁論大会という方式による効果といえます。

 いったん現役を退いたとされる高齢者は、とかく消極的で受け身になりがちであり、そう思われがちです。それゆえ、高齢者が社会に向け元気よく主張する場を設けることはその姿を通してもともと元気なはずの高齢者を励まします。また、外に向かうきっかけになれば生活習慣病や寝たきりの要因である閉じこもりをなくせます。もちろん、青年にも負けないぐらい新しい挑戦に意欲的な高齢者もいます。さらに、智恵も経験も豊かな高齢者だからこそ訴えることのできる主張もあり、それは高齢者の社会的存在意義を高めます。

 この大会の準備運営にも多くの高齢者が協力して主体的にかかわっています。趣旨に賛同するNPOなどとの協同の輪も回を重ねるごとに広がってきました。これらは大会が継続できる理由です。その意味で、今、「主体的参加」と「協同」が現代の社会と人間関係を新たに再生しうるキーワードになっているような気がします。

 たしかに、大勢の人の前で自分の考えを主張することは勇気が要ります。しかし、主張者も聴衆もみんな感動できるのがこの大会です。高齢者のみなさん、あなたも一度試してみませんか。

(上毛新聞 2003年8月21日掲載)