視点 オピニオン21
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主婦 岡本 優子さん(箕郷町柏木沢)

【略歴】渋川女子高卒。一昨年、地元の人たちによる演劇「蚕影様物語」で国民文化祭の自主企画事業に参加。昨春は「貰い祝儀」を地元の人たちの手で再現し、映像に残すことに参加した。

てんじんまつり



◎庭先でのびのび遊ぶ

 キャー、ウワァー、早く早く、何やってんだよう、もういいかい、まあだだよ、〇〇ちゃん早く―。男女七、八人の子どもたちの遊ぶ声が、夕方、農家の庭に響きます。昭和三十三年の冬の思い出です。今日は小学五年生の仲良し女の子が集まって、てんじんまつり(てんじんまつりという名のもとに一晩、子どもたちだけで泊まる)をすることになったのです。

 宿になった友だちの家は大きくて、蔵も二つか三つあったように思います。兄弟姉妹や近所の親せきの子も加わって、とてもにぎやかです。かくれんぼや石けり、なわとび、おしくらまんじゅう、まりつき、ピンポンなど思いつくまま、自分たちにとって「おもしれーこと」をして、とにかく遊ぶのです。

 かわいいおかっぱ頭と丸刈りの子どもたちが農家の敷地いっぱいに走り回って遊ぶさまは、今思い出しても何と幸せだったことかと思うのです。あまりうるさいことも言われないで、友だちのお母さんが「夕食だよ」と呼んでくれるまで、日いっぱい遊びました。夕飯のメニューはおっきりこみか、おしんこ(すいとん)だったと思います。

 少し大きくなった高校生の時のてんじんまつりの夕飯は、部屋を暗くして、お母さんが作ってくれた鍋の中に、自分たちで持ち寄ったものを一人ずつ入れていくのです。全員が入れ終わったら電気をつけて、おっかなびっくり鍋のふたをあけて食べたのです。梅干し、こうこ(たくあん)、切り干し(干し芋)、ゆで卵、カボチャなどが入っていて、何が自分の器に入ってくるのか、不安と期待で面白がったり、嫌がったりと、この時間がとても楽しいのです。

 さて、おいしい夕飯を食べ終わると、子どもたちは蔵の二階の部屋に行って寝るのです。仲良したちは簡単には寝付くことはありません。歌を歌ったり、しりとりをしたりと、夜が更けていきます。だんだん話がエスカレートして、怖い話に夢中になり、ますます眠れません。誰かが便所に行きたいと部屋を出ていこうとすると、他の女の子たちも一緒に付いてきました。さっきまで怖い話をしていたので、下の外便所まで行けなくて戸惑っていました。突然、家の子が「ここでやっちゃおうか?」と言ってはじめてしまったのです。

 そこは、蔵と母屋の二階をつないである渡り廊下でした。集まった仲良したちも一緒に並んでしてしまいました。誰かが「遠くにとんだね」と言いました。すると、「そうだね」と口々に楽しそうに話すのです。それから部屋に戻り、しばらく話が続き、いつの間にか寝付くのでした。

 近ごろ、やりきれないほどの子どもたちの事件を耳にしますが、解決策はないのでしょうか? 今の子どもたちは、いろいろなものに制約され、のびのびとした子どもらしさを失ってしまったように思います。人が生きていくために、何が正しくて何が悪いことなのかを見失わないように、大人たちもしっかりと子どもたちを見守っていかなければいけないと思います。

(上毛新聞 2003年8月16日掲載)