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柴山建設代表 柴本 天二さん(草津町草津)

【略歴】長野県延徳村(現中野市)出身。延徳中卒。群馬建築士会理事、吾妻流域林業活性化センター木材利用促進検討部会長、県木造住宅産業協会理事などを歴任。草津温泉の旅館などを多数建設。

クリーンな町づくり



◎環境に優しい建物を

 「自然環境」という言葉を辞書で調べてみると、「自然を生かし、人の心に安らぎを与える、そのままの状態をいう」とある。

 一昨年、県内の女性建築士の皆さんと、東京に住む若い建築士の講演を聞いた。内容は、自然に優しい建物を造るという発想から生まれた「共生建物」についてだった。例えば、マンションなどを建設する際、周辺の木を残し、庭先にキュウリ、ヘチマ、カボチャなどを植えて日陰をつくる。屋上には庭や畑をつくって、ヒートアイランド現象を防ぐといったものだった。

 老朽化したマンションなどの集合住宅を、こうした共生建物に建て替える場合、住んでいる人たちに十分に説明し、理解してもらわねばならない。その際、夢や理想だけでコミュニケーションを図っても、うわべ上のまとまりはいいものの、本音ではまとまりにくいという。

 それならばと、自己負担がどのくらいになるか、資金面などから話し始めると、意外にうまく進んでいくケースが多いとか。特に、若い人たちは計算にたけていて、そこから本当のコミュニケーションが始まるという。

 かつては「ざっと、このくらい」といった話で契約した時代もあったが、現在は具体的に数字を出していかないと、先に進まないようだ。「若い人たちの考えは、的を得ている」と感心しながら、講演を聞いた。

 「これからの観光地は庭園の時代がやってくる」ということで、今から三十六年前の一九六七年、草津温泉の西の河原入り口にあるホテルに大浴場を建設する際、庭園を造ることになった。斜面を掘削して大浴場を建設したのだが、地盤の強度計算の結果、スラブ構造を土厚四十センチも盛った。大浴場の周りに芝の種をまき、砂利を敷いて庭を造った。現在では松の木など、さまざまな樹木が茂り、立派な庭園になっている。

 その当時は「環境」といった考えがなかったように思う。それよりも、寒さに耐える工法が大切だった。気象状況の変化でコンクリートなど構造物が結露して破壊する。建物内にあっては保温、断熱、さらに温泉地特有の酸性泉に対応した保護などが必要だった。そのため、コンクリートが長持ちするように考えて造っただけだった。

 都会の高架橋のコンクリートがはがれ落ちて、通行人がけがをしたという報道があった。わたしもコンクリート構造の建物を造った際、土がもっと保水するものと考えていたが、失敗するという経験を持っている。表に出ているコンクリートも凍結で壊れることや、酸性雨などの対策も考えておきたかった、と反省点も多い。

 しかし、周りを石積みして庭園化するなど、苦労して造った建物は今考えると、環境に優しいことにつながっていたのだと、あらためて感じている。

 夏はヒートアイランド現象、冬は排ガスやスモッグ、アイスアイランド現象などが起きる。このようなことがないよう、自然に優しいクリーンな町づくりが必要だと思う。そして、今後は化学物質に頼らず、シックハウス症候群などにも対応した資材を使い、安心できる建物を構築しながら、田園都市を進めていきたいものだ。

 理想郷としては、庭先に畑を設け、自然と緑と青い空を求めたい。家庭菜園で新鮮な食材を育て、ゆっくりとした食事で安らぎを得たい。つまり、スローフード社会とでもいおうか、安心して生活できる社会を皆で築いていきたい。

(上毛新聞 2003年8月14日掲載)