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◎人も自然も喜ぶことを 本格的な夏を迎えると、昼夜を問わず空調機をフル稼働して暑さを凌(しの)ぐことが多くなりますが、電力などエネルギー使用は極力自粛する機運が各方面で高まっています。できるだけ自然の涼を取り入れた生活をと思いつつも、屋外の仕事や閉め切った車内の暑さには勝てず、思わず空調機に頼らざるを得ません。現代の私たちの生活は衣食住のほとんどを他者に頼っており、この使用するたいていのものは企業がつくっています。 一九七〇年代は環境問題ではいわば「産業公害」の時代といわれ、日本では「水俣病」やアメリカではラブキャナル事件等、一九八〇年代後半には地球温暖化や酸性雨、オゾン層破壊など地球環境問題が表面化し始めました。地球環境問題は、従来の公害問題のように、誰かが加害者で市民が被害者という構図を超えて、世界人類すべての活動が地球環境に影響を及ぼすものです。地球の限界など意識せずにその恩恵に抱かれて生きてきた私たちにとって、いろんな現象や情報から危機感を感じることはありますが…。 二年前にカナディアンロッキー山脈の氷河を訪れた際に「周囲の山々はすべてこのような氷河で覆われていましたが、この氷河も地球の温暖化で毎年少しずつ解けており、ロッキー山脈からはあと五百年で完全に氷河は解けてなくなります」というツアーガイドの説明がありました。地球環境の本質を例える時に「蓮(はす)の葉」や「茹(ゆ)で蛙(かえる)」のクイズがよく使われます。ツアーガイドの言葉にこの二つのクイズの話を思い出しました。と同時に、自身も企業に属する人間であり市民であることで何ができるのだろうか、と考えさせられます。 ビールは自然の恵みを原料に発酵という働きによって生まれた自然食品です。ビールを造る工程では水やエネルギーを使いますが、できる限り環境負荷がかからないたくさんの保全活動に取り組んでいます。 例えば製造工程で副産物や廃棄物も発生しますが、100%再資源化しています。副産物は最近話題の健康食品の「ビール酵母」や高付加価値利用としてのキノコの菌床素材やヨーグルトなどを開発し健康に役立つものとしても再利用されています。 また、商品となって市場に出る際の容器であるビール瓶はほぼ100%回収されますが、瓶ガラスの表面にセラミックコーティングを行い、一本当たり百三十グラムの軽量化を図りました。一本ではわずかですが、年間九億本という瓶使用量から換算すると、省資源やトラック輸送の際の物流の省エネにも役立っています。同様にアルミ缶の上蓋(ふた)の口径を約七ミリ小さくし軽量化すると、年間約二・五万トンのアルミ資源の節約になります。 企業は単に売り上げを増やし、利益を上げるのではなく、地域や社会、個人にとって真に必要な存在にならなければなりません。できることはもちろん、人も自然も喜ぶことを目指してともに歩んでいます。今年も大切な水を守る植樹活動「水源の森づくり」が始まっています。地域での空き缶拾いや植樹、ごみ分別の徹底など個人としてできることはほんの小さなことかもしれませんが、地球環境をおかす負の財産を次世代に引き継いだり、その処理を委ねることがあってはならないと思います。 (上毛新聞 2003年7月30日掲載) |