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元高等学校長 山下 隆二さん(高崎市正観寺町)

【略歴】群馬大学芸学部卒。東京都中野区立中央中や藤岡工高、渋川高に勤務、東毛養護学校伊勢崎分校教頭、太田西女子高校長を務める。元東和銀行勤務。

生活の基本



◎実社会で役立つ4項目

 私が、県立みやま養護学校勤務の時、梅山薫校長から言われたことがあります。社会生活で通用することの基本は、「あいさつをする」、「時間を守る」、「姿勢を良くする」、「靴をそろえる」の四つを守れば間違いはないし、大切なことであるということです。具体的で分かりやすいまとめ方であり、このことはその後の教職生活に大変貴重な言葉として役立たせていただきました。簡単そうであるが守るのはなかなか難しいものがあります。以下、内容について所見を述べてみます。

 「あいさつをする」ことは少しの勇気があればできることですが、その場の雰囲気が良い方に向きますし、その日がうまく動き出します。一般に都会ではあまりされず、地方に行くとよくされます。会社等団体によっても違いがあります。人間の結びつきの違いを感じます。最近、小・中・高校生がよくあいさつをするようになりました。学校も指導に力を入れているようで喜ばしい限りです。山登りでは良くあいさつを交わします。他の場面でもあの雰囲気があればと思います。

 「時間を守ること」。これは信用問題の一番目に挙げられるものといって良いでしょう。時間を守るということは約束を守ることです。遅れた人には幻滅を感じたり軽蔑(べつ)を感じます。これは都会では良く守れるが、田舎では守れない傾向にあるようです。信用を守るためには、まず時間を守るべきでしょう。

 「姿勢を良くすること」。最近、子供たちの姿勢が悪くなっているのが気になります。姿勢を良くすることは気持ちがすっきりするほかに仕事や勉強の能率が上がることがいわれます。また頭脳の刺激にも大変良いし、体調も良くなります。姿勢は、各職業や各スポーツにより独特な姿勢がありますが、それぞれ基本の姿勢があり、優秀な人は理にかなった良い姿勢をしています。一般には座った姿勢、立った姿勢、歩く姿勢が基本ですが、気をつけている人と気をつけない人との差は大きく、人格まで問われることになると思っています。

 「靴をそろえること」。案外気がつかないことですが、社会生活の中で非常に大きな意味を持ちます。訪問の際、靴をぬいで上がる時や部屋にスリッパを脱いで入る時、これができるかできないかで人格と品位がわかるというくらいです。これは習慣にしないとできないことですが、大切なことと思います。

 最後に、私の修学旅行引率の時の経験を述べます。羽田空港でのあいさつは前述の四つの項目を話して二分足らずで済ませました。九州の宿泊旅館では主人より「こんなしっかりした生徒さんは今までで初めてだ」と大変褒められました。生徒は、あいさつは良いし時間は守るし、各部屋のスリッパはどこでもきちんと外向きにそろえてあったからのようでした。学校でも集会の折に時々話しておりましたが、生徒が実社会で実行してくれたことをうれしく思いました。当然修学旅行は無事で快いものでありました。

(上毛新聞 2003年7月28日掲載)