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◎支援の輪大きく広げて 「私、きっと歩けるようになるよネ」「私だってみんなみたいに立って歩きたいよ…」 小学六年生千恵子さんの心からの叫びでした。赤ちゃんの時から痛みに耐え、治療や訓練を受け続けてきています。ハンディをもった子どもさんの多くは、希望と失意のくり返しの中で、お父さん・お母さんたちと頑張りぬいてきているのです。今よりも「障害」に対する世の中の理解は少なく、ともすれば、哀れみや差別のまなざしとなって、注がれたことも多いのではないでしょうか。 「社会的に生産活動に参加できない人の支援は、あまり意味がないのでは…」とまで言った人もいました。「生産活動」、それは社会を支える大きなことだと思います。でもハンディをもった人(子ども)たちの頑張っている姿は、人々の心に感動とやさしさを生みます。今の世の中には、特に必要不可欠の最高の生産活動であると思います。 現在、大間々町では、行政・地域・学校等で福祉に重点を置き、ハンディをもつ人や家族そして支援する人たちの声に積極的に耳を傾けてくれています。生まれ育った地で生き生きと活動できることを目標に、努力を続けてきた「ひいらぎの会」の夢も実現に向け、準備が進められています。大きなあたたかい心で土地や建物を町に寄贈してくださった、亡き方々のご遺志を大切に、社会の一員として、自立に向けての活動の日々がもうじきスタートします。支援する立場で何ができるか、原点にかえり、考えてみようと思います。 私の心の中にいつも聞こえていた少女の叫びをはじめ、たくさんの思いは、苦しい時を何度ものりこえ、それぞれに成長しています。千恵子さんは、明るく活発な二十三歳の女性に。自転車で十一キロの道を養護学校まで、しっかりとペダルを踏んで通い続けた保典君、今春より地域の工房で木工作業に汗を流しています。五年生の時からおもちゃ図書館のボランティアさんを続けている哲志君も、今春から会社員としてしっかり働いています。他の子どもたちもみなたくましい若者に、そしてやさしい心づかいのできる女性に成長しています。本人の頑張りと家族の愛。まわりの人の理解が一つになった結果なのです。 ハンディを個性として認め、社会の一員として受け止め、支援してくださる人の輪を大きく広げてゆこうと思います。すぐそばで、成長を見守ることのできる幸せを感じながら…。そして、おもちゃ図書館「もみの木」は、子どもたちだけでなく、地域のお年よりも一緒に楽しい時間を過したいと思います。昨年のクリスマスイベントでは、雪まじりの雨にもかかわらず会場まで足を運んでくださった方の言葉が印象的でした。「今日は、とっても楽しかった…小さな子が見られてうれしかった!!」。中学生のブラスバンドの演奏に合わせ、はしゃぐ子どもたちの姿が、ひとりぐらしの寂しさを少しでも癒やすことができたのであれば、本当にうれしいことです。これから年齢をこえ、ハンディをこえ、集えるふれあいの広場「もみの木」を目ざしたいと思います。アルプスの少女ハイジが、モミの木の下で、おじいちゃんとペーターとクララと楽しく、幸せに過ごしたように…。 (上毛新聞 2003年7月27日掲載) |