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ムゲン取締役 山崎 久美子さん(新田町木崎)

【略歴】栃木県足利市出身。大貫服装専門学校卒。1984年に山崎酒造現社長の俊之さんと結婚。店番のかたわら商品企画などを手掛け、99年にムゲンを設立。コンサートや展覧会の企画なども行っている。

ありがとう



◎すてきに使いたい言葉

 いついただいてもうれしいものは“ありがとう”のひと言です。お礼の言葉として“すみません”を代用してしまうこともありますが、やはり笑顔とともに“ありがとう”が上手に言えたらすてきだと思います。

 店に立っていると実にさまざまな人がいろんな言葉を投げつけていきます。うちはディスカウントではないので“高いね”とよく言われます。普通に売っているので決して高くはないのですが、安売りをしないのをまるで悪いことをしているように言うお客さんは年中です。“〇〇ならいくらで売ってるよ”、“じゃあそこで買ってください”と私。確かにお客さまは選ぶ権利があります。気に入らないのなら黙ってよそで買ってくれれば良いのになぁと悲しくなります。

 またある別の所へ子供の友だちもつれてお手伝いに行った時のこと。暑いところをありがとうと言って事務所の方がジュースを下さりました。飲んでも良いかと子供が聞くので“いいよ”とその場で飲ませたら、その中の一人の子が“まずいね!!”と大声で言うのです。確かにその子の口に合わなかったかもしれませんが、私は“好きじゃなかったら黙って残しておきな! 私が飲んじゃうから”と飲みほしました。

 でも悲しいのはこの先です。“おいしくないと思ってもその人に聞こえるような声でまずいと言ったら、くれた人が悲しいと思わないかな”って聞くと、その子は“だって本当にまずいんだもん”と何が良くないことだったのか意に介しません。

 わが家の食卓でも同じです。出ていることの多い私に代わり、母が食事の支度をしてくれていてとてもありがたいのですが、私の躾(しつけ)もいまイチだったのか、子供が好き嫌いをすることがあります。そんな時、母は“好きでないものは黙って残しておけば良い。残っていれば、あまり好みでなかったんだとわかるから”と教えてくれます。世の中すべて自分の好みのものばかりありませんし、意にかなわないこともあります。でもそれを率直に言うことでかえって他人から憎まれてしまうことも多いと思うのです。

 小さな子供がいる若いお母さんにおあいそに飴(あめ)を一つあげたら、“うちの子はこういう物は食べさせない”とつっぱねる人もいます。それもその家の教育方針なのでしょう。でも“ありがとう”と言って受け取ってくれたら、差し上げた方はとてもうれしいのに。うちの子もよそさまへ遊びに行って何かいただいた時、もし好きでないものなら“今おなかいっぱいなので後で食べますと言っていただいてきなさい。後でお母さんが食べちゃうから”と教えてきました。賛否両論あるでしょうが、会話は相手あってのこと! 心したいと思います。

 そして“ありがとう”の言葉をもらえたら、またがんばろうという気持ちがわいてきます。だから短いけれど今のせち辛い世の中を明るくしてくれる大切なキーワードをすてきに使えるよう一層自分を磨かねばと思う今日このごろです。

(上毛新聞 2003年7月22日掲載)