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◎あわてず、急がずに 先日、二男の通う中学校にPTAの同窓会が発足した。発会の際には、過去五年くらいを目安にPTA役員経験者が三十人ほど集まった。現在、私自身この中学校のPTA会長をしていることから、度重なる打ち合わせと称する飲み会に招集され、そのたびに何を打ち合わせたかいささか怪しく、企画がスタートしてから実現までことのほか時間を要した。 大枠で会の趣旨はといえば、かつてのPTA活動の経験者が地域には多くいて、そういった一度かかわりを持ってくださった方々が、学校(地域の子どもたち)の応援をしていこうというもの。まあそれを肴(さかな)にたまには集まり、旧交を温めて元気を出そうという、もう一つの趣旨のほうが目立ちがちな会でもある。 趣旨はさておき、昨今の子どもたちを見ていると、驚くほど多くの物事に囲まれて忙しく、学校の現状も数年前とは別世界と印象を述べる先生もいる。 ゆとり教育といわれた週五日制の導入などは実際問題、現場を多忙化させ、無理につくり出した休日に地域や親は対応できないでいるように感じられる。つまりは揺れ動く社会の変化の中で、子どもたちが想像以上の適応要件を背負わされた感じだ。 総合的学習の時間や職業体験学習には、今や地域や保護者の協力は欠かせない。むしろそのことは、学校よりこういったPTA同窓会のほうが得意で、いろいろな人脈や歴史を知っている。そんなことの一助になればということもあり、人呼んで「学校支援隊」という。目を閉じるとなにやら、中年の役員が風呂敷などを首に巻いて立っているかのような、レトロなイメージは気に入っている。 二年前にこのあたりでは、地域にある南高校、桜木中学校、桜木小学校、神明小学校の四校で学校連携がスタートした。 この地域は、二つの小学校から中学に生徒が進み、その地域内には昔から県立高校があるというところであったが、実際に学校間(横)の連携はなかった。二年前から四校でも、校長、教頭はもとより、連携担当教諭も決めていただき、具体的活動に入った。 PTAの側は合同本部懇親会をはじめ、連携した清掃活動の実施などをスタートさせた。生徒間でも高校の管弦楽が小学校のコンサートに来てくれたり、部活の指導をしてくれたりと交流が始まった。 お互いに顔の見える地域で、お互いのことがわかるということで防ぐことのできる危機もあるし、目指す地域も見えてくる気がする。三年目を迎えた学校連携は、学校の人事異動ということで一つのターニングポイントを迎え、一瞬雲がかかったが、互いの前向きな思考が、いとも簡単に雲を取り払った。「あわてず、急がず、できることから一つ一つ」。中学の前校長の言葉が頭をよぎる。 四校連携が横軸なら、さしずめ学校支援隊は縦軸といったところだろうか。スピードアップする社会の中で、あわてず、急がず、一つ一つ、レトロな中にも軸のできつつあるこの地域に、今ひそかに期待している。 (上毛新聞 2003年7月17日掲載) |