視点 オピニオン21 |
■raijinトップ ■上毛新聞ニュース |
|
|
◎曲がり角の重要事業 今年三月末、国土交通省から平成十五年の地価公示価格が発表されました。群馬県内では、住宅地が6・6%、商業地が10・0%の減で、全国平均を上回り十二年連続の下落になっています。 先日、太田・伊勢崎・足利・佐野市および周辺の町の中心市街地や土地区画整理事業(以下、区画整理)などを見学してきました。どこの市でも、中心市街地は空き店舗が多く街づくりもむずかしい時代を迎えているようです。市街地周辺の区画整理区域では、新家屋が立ち並んでいましたが、アパートや共同住宅が多く、将来の人口構成から見ると不安な面も感じました。 今、区画整理は、経済の低迷や土地価格の下落等により、曲がり角にあるといわれています。経済が右肩上がりの時代は、市街地がどんどん膨張し、スプロール化が進み、その受け皿をどうつくるか、枠組みをどうしていくか、マスタープランを作成して都市計画を定めていくことが大切でありました。しかし、人口の増加が望めず、高齢化社会になりますと、都市化も世帯分離も望めない等、需要が限られます。また、投入できる公的資金も限度があり、減歩率の問題、保留地価格および販売等により事業進捗(ちょく)が難しい状況にあります。 区画整理は、市町村等が土地の所有者などから意見を聞き、計画をつくり、その区域内の方に少しずつ土地を提供してもらい、事業を行います。この土地を集めて、道路や公園等生活に必要な施設が総合的に整備されます。道路事業等のように、一つの施設を買収することによって整備する方法と異なり、面的な広がりをもった広い地域にわたって一括して整備ができる利点があります。さらに、上下水道や住宅建設等多くの事業にわたり需要が喚起されますので、経済的波及効果も大きいわけです。 このように区画整理は、都市防災等街づくりに重要な事業ですので、困難な状況の中でどう進めていくかが課題です。例えば、(1)大きな区画整理でなく、小規模で、組合単位で競争しながら立ち上げていく(2)土地利用をどう更新し、都市経済をいかに活性化させるか(3)新しい発意がある地域を大切にし、住民の指導者を養成しながら、街づくりの活動をどう支援していくか(4)減価補償地区の区画整理は、土地を売った人が、外へ出ていかないよう再開発住宅の建設や交付金にする等の工夫(5)他の公共事業の導入を図るとともに経費の節約および工期の短縮をするため、工事の一括発注や多種工事を複数年で一括契約する等の工夫―などのことが必要ではないかと考えられます。 区画整理は、年限がかかり、時間的なズレが生じ、調査、計画、事業実施、事業終了等、各段階でその状況や条件が変化しますので、適切な説明、話し合いを行い、合意形成が大切と思います。 都市整備の方向は、これまでは道路や公園をつくり新しい市街地を整備していくことが主な目的とされてきましたが、今後は、既存のストックを活用する等、「量的な拡大型」から「質的充実型」に転換を図る既成市街地の再生、再投資等が求められていくのではないでしょうか。 (上毛新聞 2003年7月12日掲載) |