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◎運営機材で様変わり 陸上競技は分や秒、メートルと世界共通で比較できる競技です。長さは歴史的に古いのですが、時間は写真判定装置が開発されてからですから、百年弱です。世界記録となると気圧や天候等にも左右されます。 二〇〇〇年に開催されたシドニーオリンピック陸上競技の運営責任者で、オセアニア陸連会長のビル・ベイリー氏と一週間ほど集中して、現在や未来の陸上競技の運営について話し合ったことがあります。 現在の陸上競技は、選手のエントリーから競技成績の処理まで、コンピューターで管理しています。百メートル競走を例にとると、選手がまず競技前に召集されます。審判員の召集係主任がそのデータを写真判定審判員に送ります。選手が走り終わって写真判定装置が測定した記録入りのデータを情報処理係や審判長、大型掲示板係に送ります。すべて確認後、パソコンのエンターキーを押して送るのですが、そのような人間の確認をせずに選手や観客にダイレクトに情報を提供できないかと検討しています。審判員であれ、人が中間で介入することにより、何らかの細工をすることが可能であり、そのようなことはやらない方がよいという考えです。また、競技終了後の記録表示へのスピードも遅くなることが予測されます。早く結果を選手に伝えなくてはならない義務感があります。その考えは素晴らしく、審判方法や運営方法優先でなく、選手中心の考えに成り立っています。 ところが、ハンマー投げの取っ手を小さくしようという提案も行なっています。日本は現在、室伏広治というオリンピックの金メダル候補がいます。もし、提案のとおりに小さくすると、室伏の手は取っ手から小指がはみ出してしまいます。そうやって小指を取っ手の外に出して投擲(とうてき)している外国人選手もいるのですが、日本人選手にはいません。このルール改正が行われると、室伏は完全に不利です。日本陸連は国際陸連に対して異議を表明しています。提案の理由は、取っ手が大きいと一投目と六投目では伸びて大きさが変わり、記録に影響すると考えたようです。しかしながら、そうであれば取っ手の素材を考えた方がよかったのではないでしょうか。 そういえば、シドニーオリンピックのマラソンで、審判長はオートバイの後ろに乗って競技を行なったようです。選手たちにとって、車が多く入ることによって視界が妨げられることをよくないと考え、テレビ中継車以外は極力避けたそうです。加えて、行動範囲も広がるので好都合であったそうです。 ここで述べたのは一部ですが、柔軟な発想で考えられているようです。選手のパフォーマンスを引き上げるためには、どのようにしたらよいかを真剣に考えています。そして、選手たちの成績が大会のクオリティーを上げるだけでなく、関わった人たちの共通の達成感になることも認識しているようです。 陸上競技は運営機材の発達により、急激に様変わりしています。しかし、共通している部分には何ら変化はありません。分や秒であり、メートルです。競技するのは選手です。このことは、極端なことをいえば古代から変化していないのです。 (上毛新聞 2003年7月7日掲載) |