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県保護司会連合会長 若槻 繁隆さん(伊勢崎市茂呂)

【略歴】大正大学文学部卒。1952年から、保護司、高校教諭として活躍。88年、太田高校長で定年退職。退魔寺住職として前橋刑務所教誨(かい)師を務め、受刑者への説話を続けている。

学校週5日制



◎古人の教訓思い起こせ

 ここ数年来、県立の高校に理系を強化する課程とか、英語を強化する課程の学校を指定したりしてきていて、とりわけ、最近太田市で英語による小中高一貫教育の学校設置が承認されたことによるわけではないだろうが、新年度から中高一貫の六年制中等学校を設置する前提で、人事がされたようである。

 しかしそれに対して、今、学校現場では週五日制になったために授業確保で頭を絞り、二学期制にするとどれだけ時間数が増えるかと考えているのが、現状であると聞いている。確か平成十三年ごろのJRの車内広告に「当校では土曜も授業します」というような宣伝があったような気がする。

 確かに親と子供の接する時間をつくることとか、子供に社会参加をさせること、また、社会が育てること等々、良いことであることは事実である。

 しかし、その年齢の子供を持っている親は、不況とリストラに恐れおののき、家族を守るために必死で働かなければならないのではないだろうか。なら子供と触れ合う時間も少ないはずである。ボランティアがいるといって、どこまで任せていいのだろうか。自分の家族に責任の取れない親になりたくないからこそ、脇目もふらずも働いているのである。

 昔の人が「子は親の背を見て育つ」と言ったが、一生懸命家族のために働く親の姿こそ、何物にも替えがたい教訓であるはずである。昔、貧しい生活をしていたといわれた家庭からも実に素晴らしい人たちが輩出しているし、かえって恵まれた家庭に育ったといわれる人が、親を超えることもできず、市井に埋もれ、名を汚して終わっていることもある。

 また、週五日制にしたために父母の経済的負担が増加しているということも聞いた。理由は土曜にテストや特別補講を組んで、学力の低下を防止するのであるが、土曜は休日であるためにその手当てをしなければならないとか、父母負担の増加を阻止するために、一時間の授業を五十分から六十五分にして、二週間で一クールとした時間表の組み方にするというような苦労をしているようである。それもこれも、良いか悪いか、あるいはどのような結果をもたらすかは先のことになるが、低下した学力を取り戻すことは至難の業でもある。

 しかし、巷(こう)間このような話に対して、誰もが声を大きくして、「是正を求めよう」としないのが不思議である。そして、一方では閉鎖的な教育機関に風穴を開けるためか、民間企業の経験者を管理職に登用するという画期的な人事が実施され始めたようであるが、これも長い目で見ないと一時的な線香花火に終わって、かえってマイナス面を強調する可能性もあり、それこそ孤立させないために学校評議会という組織をいかに「活用」するかということになる。古人の「三本の矢」「温故知新」の教訓が今こそ大切なときと思われる。

(上毛新聞 2003年7月3日掲載)