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◎子どもの心に沿って 「お母さん、ヘルプ!」 週末、市内に住む娘が、発熱で全身発疹(はっしん)の六歳の孫と、いたずら盛りの三歳の孫と、洗濯物の山を抱えて、わが家になだれ込んできました。 「チビかいじゅうを頼む!」と、夫と私に声をかけながら、病気の長男を寝かしつけ、痒(かゆ)がる背中をさすったり、水を飲ませたり、その合間に洗濯機をまわし、二男のオシャベリに相づちうったり…。 (気弱で涙もろかった娘が、ずい分たくましくなったものだなあ…)と感心しつつ、「されど母は強しだねえ」と私が言うと、「ダメダメ、ちっとも強くなんかないよ。何かあると、すぐ子どもに振り回されちゃうんだもん。この間だってさ…」と、孫たちの保育園でのエピソードや、家庭内でのハプニングを私たちに披露し、子育ての難しさを訴えました。 いかにも納得といったことばかりなので、思わず笑ってしまってから、「子育てって大変だよね。夫婦で育てるっていっても、小さいうちは、特に母親が担う部分が多いから…。テキスト通りにはいかないよ。子どもたち、みんなそれぞれ違うもの持ってるもの…。でも、それが子育ての楽しいところだよ」と、自分のことは棚にあげ、偉そうに、私は、娘に、S君親子の話をしました。 五歳のS君は、小さくて、とても恥ずかしがり屋。はりきってスポーツクラブに来たものの、どうしても仲間にまざれず、始まると同時にお母さんにしがみついてしまいました。 いくら促してもダメ。その日は、とうとう見ているだけでした。 そして翌週も、その次も、その次も…。 私たちスタッフが、あの手この手を試みましたが、S君は、お母さんの隣にちょこんと座って、みんなが楽しそうに運動するのを、じっと見ているだけでした。「早く仲間に入れるといいですね」と言う私に、S君のお母さんは、笑顔で答えました。 「おかしいんですよ。この子ったら、家へ帰ると、家族のみんなに、“今日は跳び箱やったんだよ。足をパーに開いて、エイッ!って跳び箱を押すんだ”なんて言って、私を馬にして、跳んでみせるんです。まるでやってきたかのように…。ここでは見ているだけなのに、この子の気持ちは、しっかりみんなにまざっているんですね。そのうちきっと…」 そして、本当にその通り、S君は、一年生になったその時から、仲間と一緒にずっとスポーツを楽しんでいきました。 日々、変わっていくのが子どもです。体も心も十人十色なら、子育ても十通り。 「子育て渦中のお母さん、子どもの心に沿って、ゆっくり歩むがいいですよ。そして、どの子もみんな、健やかに、ゆっくり大きくなあれ」 おばあちゃんからの願いです。 (上毛新聞 2003年6月13日掲載) |