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おおままおもちゃ図書館「もみの木」代表 渡辺 紀子さん(大間々町桐原)

【略歴】前橋文化服装学院(現・前橋文化服装専門学校)卒。洋裁教室を開く。大間々町の小中学校で特殊学級と図書館司書の補助員を9年間務める。1992年に「おおままおもちゃ図書館もみの木」を開設。

できること探し



◎未来に夢を持てる子に

 「この子が大きくならないで、小さなかわいい子供のままでいてくれたら…と思うことがあります」。お母さんがふとつぶやいた言葉。こんなにも悲しく、重く深い愛情を込めた思いがあることに、私の胸はつぶれそうでした。母として子供の未来に夢を持ち、成長を楽しみにしているはずなのに…。どうしてと心の中で問いかけても、声を出すことのできないお母さんの横顔でした。

 ハンディを告げられてから、不安の中で大きな愛と、はかり知れない努力とで育ててきた日々。そしてこれからの日々を考えた時に、お母さんの心をよぎった思いなのでしょう。

 成長とともに広がる可能性。ハンディがあってもそれは変わらないはずです。一つのことができるようになるのに時間が必要でも、手助けが必要でも、できたことには変わりないのですから。障害ではなく個性として、家族だけでなくかかわる人たちが認め接した時から、ハンディは少しずつ少なくなっていくはずです。そして可能性が生まれてくると私は信じました。子供たちは純粋で素直で頑張り屋さんでした。月日がたち、多くのことがお友だちと一緒にできるようになりました。お母さんたちも、不安はあっても可能性を信じ成長を楽しみに、この子にとってどの道が良いのかを見いだそうとしていました。

 おもちゃ図書館「もみの木」でボランティアさんとして活動していた車いすの少年と少女が高等部に進学、お母さんたちは、他のお母さんたちと一緒に「子供たちの未来を考える仲間たち、ひいらぎの会」を平成八年一月に発足させました。未来に夢が持てるよう「できること探し」をスタートさせたのです。

 まず、子供たちとお母さんたちの活動の様子や思いを、一人でも多くの人に知ってもらうため、町のイベントに参加したり、「ひいらぎだより」を毎月発行するなど、一生懸命でした。二人が高等部を卒業するころには、パウンドケーキ作りを始めました。納得のいくまで何度もくり返し、甘さ控えめのおいしいパウンドケーキを焼き上げました。クルミや干しブドウを刻む手にも力が入り、最初は見ていてハラハラでしたが、すぐに上手になりました。小麦粉をふるったり計量したりと、一つでも多くの作業を子供たちの手で行うことに重点を置いた活動でした。毎週水曜日には甘い香りが漂い、「ひいらぎケーキ」が出来上がりました。心を込めてラッピングしてリボンをかけて、注文してくださった人たちに手渡しに行くと「とってもおいしいね」と言ってもらえました。「すごくうれしい!!」。二人の感想です。この気持ちが次の作業の力となりました。あたたかな応援をいただいて久人君、千恵子さんを中心にパウンドケーキ作りは続いています。

 香りの小瓶(ポプリ入り)やひいらぎクッキーも作り、少しずつ知名度も上がってきました。働いたお金でコンサートにも行きました。個性を生かし、できることを探して社会人として地域で活動できる可能性の証明と言えるのではないでしょうか。

 今は、大きな声でお母さんたちに言えます。ハンディがあっても、未来に夢を、そして成長を誰よりも楽しみにしてくださいと…。

(上毛新聞 2003年6月11日掲載)