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松島税務会計事務所所長 松島 宏明さん(桐生市相生町)

【略歴】明治大卒。1985年に桐生へ戻り、10年前に会計事務所所長に就任。桐生JC理事長、県小中学校PTA連合会長、生涯学習桐生市民の会会長などを歴任。現在は桐生市教育委員を務める。

今の世の中



◎次の世代を見つめよう

 統一地方選挙が終わって一カ月余り。今回もさまざまな場面で選挙につきものの誹謗(ひぼう)中傷が乱れ飛んだようです。一つの対立の構造をつくることで、想定された敵の候補は、毎度必要以上の批判を浴びることとなります。いったんそうなると、理屈では理解できても、その想定された敵をなかなか受け入れることができないのが人間の本性のようです。国同士でも同じことが起こることは繰り返される戦争が実証しています。

 つまりは人間が感情に大きく左右される生き物であるということでしょう。一度こじれてしまった感情を元に戻すのは至難の業です。だからといってはじめから相手の感情にばかり配慮していてはこちらも疲れてしまいます。

 もう一つのこじれる要因は、陰で他人の悪口を言うことです。例えば人に対する意見を正面から言わずに、陰に隠れて言うことで、足を引っ張るといったことがよく起こります。普段は「応援しています、頑張ってください」と言いながら、陰で「あの人はこういうひどい人で絶対応援なんかしない」と言い回る構造です。

 そういう大人の行動は、悪しき慣習として子どもたちに引き継がれていくことを思うと、大人の責任を痛感します。当然そういった人は、人の忠告などに聞く耳を持ちません。人間はある一定の年齢を過ぎると、周りに意見を言ってくれる人が減っていきますから、そのことにホッとしてよかったと思うか、人からの意見により謙虚になるかで、人間としての成長も決まってくると思うのですが、いかがでしょう。

 生活の環境として考えてみると、昔に比べて今の世の中は、ずっと便利になっているし、いろいろな物事のスピードも上がってきています。しかしながら、人間の生き方や生きるスピードまで、そうそう変化してきているわけではないのです。

 そのことが現代人を疲れさせる原因の一つになっていると感じます。だから今の時代に、ファストフードに対するスローフードの動きや、便利さとは無縁の昔の生活様式などに対して、その価値を見いだす動きが増えてきているのではないでしょうか。

 根本的に感情に左右されやすい人間が、長い間英知と努力を傾けてつくり出してきた世の中なのに、それが少しずつ綻(ほころ)び始めているかのようです。前述の便利やスピードを追求する環境が、少しずつ人を蝕(むしば)み、体力を奪い取っているという側面もあります。

 どうしたらいいのかなと考えても、なかなかいい策がみえてこないのですが、ここでもう一度、次の世代を見つめることから始めてはどうでしょう。人間がこれまで繰り返してきた英知と努力は自分たちのためではなく、引き継がれる子どもたち、孫たちのためであったはずです。

 そういえばある地元の大先輩がこんなことを言っていたと思い出しました。

 「松島君なぁ、物事に迷った時には、自分にとって損か得か、好きか嫌いかで決めちゃだめだよ。何が正しいかで決めないと失敗するんだよ」

(上毛新聞 2003年6月6日掲載)