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◎本物の公共空間に 皆さんは、群馬県庁前の前庭が、広く県民に利用公開されていることをご存じだろうか。「県民広場」と呼ばれ、自由に使える場所になっているということをご存じだろうか。 実はあの広い前庭、キャッチボールしても、雪合戦やっても、犬の散歩しても、日本酒片手に宴会なんかしちゃっても、好きに使って良い「ひろば」なのだ。こんなことを勝手に書くと県の管財課さんに怒られそうだし語弊があるので断っておくが、「好きに使って良い」の前には、「公の場所という自覚のもと、自己責任で行うのであれば」というただし書きがつく。ここがミソである。 「県民広場」は県庁という公共施設の中にある。紛れもない「公共空間」である。しかも県民二百万の県政を預かる県庁舎のお膝(ひざ)元、六千平方メートルを有する「公共空間の中の公共空間」ともいえる場所だ。公共空間というからは、公に開かれた場所でなければならない。誰もが自由に使える場所でなければならない。しかし、「自由に使える」とは「何でもアリ」ということではない。その言葉の裏には、「自己責任」や「公民としての自覚」という言葉が常にセットで置かれている。他人の迷惑も顧みず、テメエのケツも満足に拭(ふ)けない輩(やから)はおととい来やがれ、の世界がそこにはある。 新しい県庁舎が平成十一年にオープンしてから、展望室の利用を含めて来場者が百六十万人を超えたと聞く。県民広場は、この県庁舎がまだまだ計画段階にあったころから、市民を交え議論されてきた。新しい県庁舎は高層にする。すると敷地が広く空く。その空いた空間をどうするか。それが命題だった。 県民みんなのものなんだから、誰もが使いたい時に使いたいように使える場所になるといいよね。普段は日のあたる場所でボーッとお茶とかできて、で、何か特別な日にはお祭りしたりお祝いしたり。街の真ん中にある小さな幸せ、居心地のいい場所、みたいな。そういう「ひろば」みたいのって群馬にはないよね。まず広くて自由に使える場所なんてない。公園とかも、実際はいろんな規制があって使えなかったりするもんね。議論の場ではそんな声が上がった。 そして「思うだけでは始まらない。自分たちで何かやろう」と決起した市民有志が中心となって、県庁の前庭を使いはじめた。それが「県民広場」の始まりだった。今そこでさまざまに行われているイベントや期間限定カフェ等も、キッカケはそうした市民の思いから始まったものである。 もちろん目指す「ひろば」になるためには、施設管理や担い手の問題、交通、周辺への影響、中心市街地との役割分担などなど、さまざまな問題が山積みしている。しかし、私は何とかあの場所を、市民の自己責任のもと、真に自由に使える本物の公共空間、ひろばにしたいと思っている。いや、県庁のお膝元であるあの場所だからこそ、ひろばになれるはずだ、なるべきだと思っている。 というわけで、来たれ有志。ひろばは君を待っている。 (上毛新聞 2003年6月4日掲載) |