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高崎捺染協同組合理事長 清水 英徳さん(高崎市昭和町)

【略歴】高崎高、立教大理学部化学科卒。清水捺染工場代表取締役。元ライオンズクラブ複合地区(本県など5県)管理委員長。染色の全国大会で通産大臣賞をはじめ中小企業庁長官賞など受賞多数。

珍客



◎他国の文化理解に熱心

 先日、ニュージーランドのオークランドから中年のご夫婦が、縁あってわが家にやって来て数週間滞在した。このご夫婦は経理士を職業とし、人柄が良く常に笑顔で接する人であった。数年前、ある奉仕団体の関係で、ノースショワーの市庁舎にモニュメントと桜の木を寄贈したのが縁で知り合った間柄である。特に日本の文化に興味を持ち、このたびの来日を楽しみにしていたとのことであった。

 ニュージーランドは十世紀中ごろに先住民マオリ人が渡り、十七、十八世紀ごろからイギリスを主としたヨーロッパ人がこの国に渡来した。一八四〇年にマオリ人との間にワイタンギ条約が結ばれ、英国植民地さらに英国連邦内の自治領となり、英国君主であるエリザベス二世を国家元首として、その代理人の総督を象徴とする立憲君主国家であり、イギリスの長い歴史と伝統を誇りにしている。

 昔、鳥類の天敵となる哺(ほ)乳類はコウモリ以外生息しなかったそうで、キウイなどの飛べない鳥や、飛ぶのが苦手な鳥が誕生したという。そのせいか、人間性もかなりゆったりとして、とても親しみを感じた。

 到着した当日からティータイムにコーヒーをすすめたが、せっかく日本へ来たのだから緑茶を飲みたいと言い、以後ずっと緑茶での毎日を過ごした。緑茶を飲むときのおいしそうなしぐさが印象に残った。また、牧蓄の盛んなお国柄なので牛乳をすすめたが、滞在中一杯も飲まなかった。その代わり、日本食には大変興味を示し、夕食は日本酒を酌み交わし、刺し身、お新香や簡単な日本料理等、日本食一辺倒の日々を過ごした。

 新治村のたくみの里を訪れた際、熱心に取り組んでいる匠(たくみ)の技に深く関心を持っているようだった。商売柄、わが家にある着物を用途別にそれぞれカジュアル用としての江戸小紋・紬(つむぎ)、フォーマル用としては付け下げ・訪問着・江戸褄(えどづま)・振り袖等々をご覧にいれたが、目を丸くして食い入るように見入りワンダフルの連発であった。

 歌舞伎をはじめ、お琴・三味線・日本舞踊等、わが国の伝統芸能には特に興味を示し、相手の国を知ろうとする熱意が感じられた。立ち並ぶ東京のビルにはさほど関心がなく、日光東照宮をはじめ京都の神社仏閣など日本を代表する建造物を熱心に、しかもつぶさに観察をしていた。

 イギリスの長い歴史をもとに、ニュージーランド人の自国の文化・伝統を大切にしながら、なお他国のそれを理解しようと、日本の衣食住のルーツを真剣に身をもって体験し、国と国との相互理解を深めようとする熱心さには本当に驚かされた。

 帰りがけに、これから富士山を見て帰国する、という楽しそうなお二人の表情を見たとき、国際交流とはこんな小さなことから始まるという大切さを、身をもって感じた。

 最近、欧米化を進めてきたわが国は、とかく日本古来の文化や風習をなおざりにする傾向が出てきた。しかし、国際社会とかかわっていくためには、日本古来の文化をもう一度見直すことが、これからの世の中には必要ではないだろうか…。

(上毛新聞 2003年5月31日掲載)