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群馬陸上競技協会副会長 平方 亨さん(渋川市南町)

【略歴】渋川高、早大教育学部卒。現役時代は400メートル障害を中心に国体などで活躍。長野原高、桐生高教員などを歴任。日本陸上競技連盟国際委員長。四月から同連盟に出向。

競技者代理人



◎出場料交渉などを担当

 最近よく野球やサッカーなどの海外移籍に関しての記事を読むと「競技者代理人」という文字を見かけます。実は日本陸上競技連盟でも競技者代理人の活動を平成十四年度より認めました。それまでは、競技者代理人が行う事項は日本陸上競技連盟が直接行ってきました。さて、その競技者代理人ってどんな人のことを言うのでしょうか。

 競技者代理人は略して「AR」と呼ばれています。ARとはアスリート・レプレゼンティブです。ある世界的にも優秀な一人の選手がいるとします。その選手のトレーニング計画作成や練習はコーチが直接当たります。そして、その選手の年間通しての大会スケジュールに沿った大会申し込みや、その選手の収入などは競技者代理人が交渉します。世界的には選手の肖像権は本人が持っているのが普通なので、そのことを代行すると考えると簡単だと思います。

 例をあげます。二十世紀を代表する陸上選手のカール・ルイスはサンタモニカトラッククラブに所属しています。コーチはトム・テレツといいます。そして、ARはジョー・ダグラスといいます。テレツはルイスのトレーニングのことのみ考えます。ジョーはルイスの大会の出場料の交渉や、マーケティング等を行います。大会を運営するオーガナイザーとすると、ルイスに出場してもらいたいためにある程度の条件をのむことになります。その中に、若いこれからの有望な選手がいると、ルイスとセットで出場交渉をするような例があるのです。このことにより、若い選手は、有力なARの元であれば、自分の実力以上の大会の出場が可能となり力がつくのです。このことを考えると、よいARには強い選手が集まり、育成され、お金も生まれるようになります。

 日本陸連はARを開放しましたが、以前よりコーチが選手のすべての部分を面倒見ていることから脱皮できないでいます。まして現在の日本人選手は、言葉の関係もあり日本人同士で成り立っています。最後に一番驚くのは、肖像権はアマチュアであるということの解釈でJOCが持っています。自分自身の肖像権もJOCが持っていると思うと不思議な感じがします。皆さんそう思いませんか。

(上毛新聞 2003年5月11日掲載)