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◎群馬がモデル県に 前回(三月十六日付)は、牛海綿状脳症(BSE)にまつわる不祥事について触れましたが、今回は、食品衛生法で許可されていない食品添加物や無登録の農薬について触れたいと思います。 これらが身近で使用されていたことに皆さんは怒りを感じ、食の安全・安心にさらなる関心が深まったことでしょう。しかし、残念なことにイラク戦争の勃(ぼっ)発と同時に、すべて戦争情報に一変し、食への関心がだいぶ打ち消された感があります。しかし、食に対する安心・安全の根底を簡単に変えてはなりません。 国では「国民の健康の保護」のための食品安全八法案が、国会に提出され、多岐にわたり検討されています。県では「県食品安全基本条例」制定への動きがあり、生産者から消費者まで見直されることになりました。一日も早く群馬県が全国のモデル県になり、食への信頼回復を取り戻すよう祈る次第です。 昨年、許可されていない添加物(香料、酸化防止剤)が、大手食品メーカーの商品にも幅広く使用されていたことが分かりました。商品の回収・廃棄と騒がれている矢先、肉まん(中国産)にもやはり酸化防止剤が使われていることが発覚して全量廃棄処分されました。 さらに、中国産の冷凍ホウレンソウから大量の残留農薬が検出され、即輸入自粛となりました。こうして輸入農産物に対する不信感が募った矢先に、国内では規制されていると思われた無登録農薬が、全国で使用されていたことが判明。農家の指導的立場にあるJAや種苗会社で販売されていたことにさらなる驚きを覚えました。 県内でも、尾島のヤマトイモ、榛名の果物等に使用されていて、多量の廃棄という大打撃を受け、これに携わる無登録農薬の販売関係者が逮捕されました。 農家では、農作物を栽培すれば当然病虫害に悩まされます。悪いと知りながら殺虫剤プリンクトンと呼ばれた農薬をJAに購入要請しているうちに自然に全国に広がったのでしょう。農林水産省の調査では三十七都道府県で使用されていたと報じられています。 最近の販売業者に対する判決文に「一般消費者に農産物の安全性に対する不信感を増大させ、深刻な社会問題を引き起こした責任は重い」「農薬管理指導士という模範的立場にありながら、会社の利益を上げるため発がん性を認識しつつ販売を続けた」とありました。 今後は、こうした農薬が使用できないとすれば、農作物から病虫害をいかに防御するかは、これに変わる農薬や、新しい技術農法の開発しかなく、時間がかかるのではないでしょうか。これを販売する業者、加工業者も実態を良く認識し、これを購入する消費者、特に家庭の主婦を啓蒙(もう)し、理解の上に立って、生産者から消費者まで一体化しないと「食品の安全と安心」が確保できないのではと考えます。 中国産の冷凍ホウレンソウが早々と輸入自粛が解除され、冷凍枝豆も認可されるのではといわれています。こんなにも早く改善されたのでしょうか。国内の農薬対策が遅れを取らないよう祈る次第です。 輸入自粛と同時に、国内のホウレンソウが一斉に高騰した事実、冷凍枝豆がすべて輸入に頼らなければならないとすれば、「ビールのつまみ」としてのこれからの需要期を考えれば、ある程度の緩和がやむを得ないのかなと、矛盾さえ感じるこのごろです。 (上毛新聞 2003年5月2日掲載) |