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元中学校教員 高橋 義夫さん(松井田町行田)

【略歴】国士館短大卒。1957年に松井田町立臼井中学校教員となり、以来35年間同町周辺の中学校で生徒指導に取り組む。91年に指導の記録をまとめた著書「中三の君らと」を出版した。

新中学生の皆さんへ



◎長所をみつけ伸ばそう

 希望と不安を胸にして中学校に入学した皆さんに、私からの提言です。

 入学した数日は上級生がすごく大きく感じたでしょう。その上級生も入学した時は皆さんと同じようだったのです。

 入学してから一週間ぐらいは緊張と不安の日が続いたと思います。でも上級生がそうだったように、皆さんもすぐに○○中学校の生活に慣れてきます。

 それでも、ごく少数の人はこの緊張と不安をうまく解消できないままでいます。それから、中学校の生活にうまく馴染(なじ)めない人もいます。

 私たちは大人でも子どもでも、新しい仲間に今すぐに適応することはなかなかできないものなのです。

 それは一人ひとりの人間がみんな同じ人間ではないからです。こんなことは言われなくも分かっていることです。しかし、このことをしっかりと意識している人は意外に少ないのです。

 ところで、地上には何十億もの人間がいます。そして、その一人ひとりがみんな違う人間なのです。親子、兄弟姉妹もみんな違った別々の一個の人間なのです。その一人ひとりの個人に備わった性格や特性が個性です。

 新しく出会った皆さんの中には、体の大きい人、小さい人、勉強のできる人、スポーツ万能の人、また、反対に勉強やスポーツの苦手な人、他人とうまく話せない人など、いろいろな人がいます。

 なかでも、新しい学校生活にうまく適応できないで、自分は駄目なんだなんて思っている人もいると思います。そんな人たちに特に言いたいのです。

 大切なことは皆さんが自分で自分のことを思ったり、考えたりするときに、他人と自分を比べて自分を見ないことです。

 前述したように、人間の中には同じ人間はいないのです。だから、自分は誰々さんのような人間にならなくもいいのです。

 自分はこの広い世界にたった一人しかいない自分だから、自分らしい自分になる努力をすることなのです。

 例えば、カレーライスはジャガイモ、ニンジン、肉、カレー粉、コメからできています。この中で、コメは優れていて、ジャガイモは劣っていると思ってはいけないのです。ニンジンも肉もみんなそれぞれの特性を出し合ってカレーができているのです。

 人間の社会もいろいろな個性の人がいて、成り立っているのです。ジャガイモ的な人間、ニンジン的な人間とさまざまな人がいるのです。

 ということは、ニンジンとコメを比べてみることは愚かなことなのです。だから、ニンジン的な人間がコメ的な人間になろうと努力しなくてもいいのです。

 でも、悲しいことは、ニンジン的な人間がコメ的な人間をうらやんだり、そういう人になりたいと思うことなのです。

 大事なことは自分の長所を自分でみつけて、自分の努力で伸ばしていくことです。そして、その努力を大人になっても続けることです。

 これが私たちが幸せになる基本だと私は思っています。

(上毛新聞 2003年4月21日掲載)