視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
おおままおもちゃ図書館「もみの木」代表 渡辺 紀子さん(大間々町桐原)

【略歴】前橋文化服装学院(現・前橋文化服装専門学校)卒。洋裁教室を開く。大間々町の小中学校で特殊学級と図書館司書の補助員を9年間務める。1992年に「おおままおもちゃ図書館もみの木」を開設。

おもちゃ図書館



◎やさしい心が集う広場

 心を上手に伝えられない子、行きたいところに思うように行けない子、みんなあどけない笑顔と限りない可能性を持った子どもたち。この子たちが楽しいおもちゃに出合うとこ、やさしい仲間に出会うとこ、笑い声がこだまして、歌声が流れて…。「ふれあい広場」のおおままおもちゃ図書館「もみの木」は平成四年十二月十二日、スタートしました。

 週五日制に向けて、学校、PTA、地域それぞれの立場で熱心な討議が重ねられていました。一番の心配は、休日の子どもたちの過ごし方でした。図書館や美術館、遊園地など、国・県レベルで子どもたちの受け皿が検討され、九月の第二土曜日から実施されました。

 ハンディをもつ子どもにとって、休日がふえることは、単純に喜ぶことができないこと。「この子たちが利用できる場所は、少ないからね…」。お母さんの沈んだ表情に、私の胸は痛みました。

 無邪気に走り回り、自分の世界をもち、おしゃべりを楽しむ―。こういった行動が許されない場は、子どもたちにとって決して行きたいところではないはずです。お母さんにとっても、周りの人に気を使うことの多い場所。

 では、子どもたちが思いっ切り羽を伸ばし、お母さんたちも気がねなく過ごせる所、そんな都合の良い場所はいくら考えても思いあたりません。主人に相談をして、おもちゃ図書館にたどり着きました。

 東京の三鷹市に最初に誕生したおもちゃの図書館は、小林るつ子さんを中心とした人たちの手で日本中に広がり、群馬県にも前橋、高崎をはじめ、町や村に誕生していました。「もみの木」のスタートまでには、たくさんの人の心が一つになり、町の理解と応援もいただき、大きな支えとなりました。

 回を重ねるごとに、お友だちもふえ、にぎやかな楽しい広場としてはぐくむことができました。

 子どもたちにとって、どのような活動が良いのか。お母さんたちも、スタッフとして、ボランティアとして共に考え歩んできました。

 その後、第四土曜日の休日にも開館。第二、第四土曜日の月二回の開館となりました。九月には、小平の里親水公園での「青空おもちゃ図書館」。緑の風の中で赤トンボと一緒に、しゃぼん玉や水ロケット、マジックショーに歓声をあげて青空の下のおもちゃ図書館を楽しみます。十二月には、サンタさんを待ってわくわくしながらのクリスマス会。二回の大きなイベントも組み、「もみの木」は子どもたちとともに成長し、昨年の十二月には十周年を迎えました。

 この間、数えきれないほどのあたたかい風が「もみの木」に吹きました。中学校のブラスバンド部のステキな音色の風もありました。おもちゃの寄贈など、活動に欠かせない応援もいただき、子どもたちのための「ふれあいの広場」としてスタートした「もみの木」は、やさしい心を持った人が集う広場になっていました。

 「誰もが秘めているやさしい心」に気づかせてくれる子どもたちの笑顔。「もみの木」のかけがえのない大切な宝ものです。

(上毛新聞 2003年4月16日掲載)