視点 オピニオン21 |
■raijinトップ ■上毛新聞ニュース |
|
|
◎生活や文化を変える 最近、新聞、雑誌にブロードバンド(一度に大量のデータをやり取りできる通信手段)の関連記事が頻繁に掲載されています。駅や家電量販店の前では、会員獲得の競争が火花を散らしている光景がよく見受けられます。 政府は、二〇〇一年を「ブロードバンド元年」と定め、二〇〇五年までに全国に高速通信網を整備するe―japan計画を進めています。これを受け、太田市は「おおたITタウン構想」を作成し、電子自治体化を目指しています。当時、通信インフラが地方都市まで整備されるのは四―五年かかり、IT革命による市民の恩恵の遅れを危ぐし、二〇〇〇年四月に低料金常時接続通信回線の第三セクターとして、ブロードバンドシティ太田(BBCO)が設立されました。 ブロードバンド事業は、将来の需要が期待されることから、ISDN(総合デジタル通信網)、光ファイバー、ADSL(非対称デジタル加入者線)、ケーブルテレビ等の事業者が相次いで参入し、低廉価格、高速化、コンテンツ開発を激しく競争しています。中でも、電話回線を使い、常時接続して高速インターネットができるADSLですが、二年前まではデジタル公衆回線網だったISDNによるインターネットの接続が最速でした。ヤフーが従来のISDNより低めの価格で、八メガのブロードバンドを提供したことから、NTTをはじめとする通信事業者が本格参入し、今年二月末には六百六十万回線の市場になっています。このため、価格破壊が進み、経営を大きく圧迫しているのが現状。さらに、高速化競争によるインフラの更新投資も大きな負担になっています。 コンテンツ市場は、日本では「コンテンツはタダ」という考え方が浸透していますので、コンテンツを有料で配信するビジネスはなかなか成立しにくい環境にあります。BBCOの例でも、(1)病院等の診療予約(2)防災情報(3)各種証明書の二十四時間受け付け―などのシステムを開発しましたが、いずれも無料提供です。将来、有料コンテンツとして期待されている映像放送や音楽は、著作権、肖像権の解決が最大の課題になっています。このところ、利用しやすいコンテンツとして取り上げられている電話は、従来の電話交換機方式をIPと呼ばれる通信プロトコル(規約)にして帯域を利用し、会員の確保、増加につなげようとしのぎを削っています。 ブロードバンドはまだ途上段階で、十分な効果の発揮はこれからですが、ブロードバンドの用途の広さ、常時接続である便利さ、双方向性、ユビキタス(いつでもどこでも簡単にコンピューターを利用できる環境)への展開、そして何よりも低コストの魅力は、明らかに生活や文化を大きく変えていくものと思います。 しかしながら、迷惑メール等に見られるように、新しい社会のルール、マナーづくりも大切で、今後、情報セキュリティー、個人情報保護等、国、自治体、住民が一丸となって対応していく必要があります。 日本では、諸外国に比較して幹線光ファイバーケーブルが完備し、通信インフラは目標に向けて順調に整備されていますので、これからは、バブルのような状況でなく実利用に向けて、地に足のついたブロードバンドビジネスが展開されていくのではないでしょうか。 (上毛新聞 2003年4月3日掲載) |