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◎根本から見直す機会 これまでの食品行政が何だったのかと疑がわせるような、食に関する不祥事が毎日のように報じられています。食品業界への不信感が募り、食に対する安全性が最も問われるこのごろです。 食品産業に携わって五十年にもなる私にとって責任感さえ感じさせられ、食の信頼回復に全力を投じなければなりません。 ここ二年の間に起きた不祥事を二回に分け、原因を究明し、「食への信頼回復」の一助にしたく思います。 最近、最も皆さんの脳裏から去らない事件は、あの「雪印乳業」の中毒事件、引き続き起きた国内での牛海綿状脳症(BSE)の発見、それに伴った偽装、補助金の水増し請求に「雪印食品」「日本ハムグループ」といった信頼されていた大手メーカーが浮上したことではなかったでしょうか。 こうした事件が明るみになったのは、流行語にもなった「内部告発」でもありました。 外国牛を国産牛と偽ったと思いきや、豚肉、鶏肉に至るまで偽装騒ぎ、一時何を信用してよいのか、消費者は先行き真っ暗になり、肉離れ現象を起こしました。 これらの一連の不祥事に対し、ある大手の社長は「この国はうそがまかり通る」と述べました。こんな悪い習慣が日本人の中に居座っているとすれば、早く取り除かねばなりません。 また、坂口力厚生労働相は「食品への信頼を取り戻すには、組織や法律だけでなく中身を見直す必要がある」と述べました。根本から見直すいいチャンスなのかもしれません。 こうした不祥事はどうして起こったのか。一流会社の弱かった組織、構造、体質なのか、会社が大きいが故の、あらゆる指示、情報が上から下へ、また下から上に通っていなく、上層の知らないうちに事が運び、業績を挙げるため、偽り事は悪いと知りつつ事が進んだとしか言いようがありません。 「悪かった」と頭を下げる社長さんの姿はもう結構であり、一日も早くなくしたいものです。 偽りのある不正行為は、会社であろうと各個人でもあってはならなく、必ず不正はいつかはばれる。正しく胸を張って渡る社会、食品産業でなければなりません。これが「食への信頼回復」への第一歩でありましょう。 一時は、スーパーからも肉製品が消え、焼肉屋さんは閑古鳥が鳴いていましたが、表示も明確化され、この正月にはすっかり元に戻りつつあることを実感しました。 しかし「のど元過ぎれば熱さを忘れる」の諺(ことわざ)ではありませんが、二度と過ちを繰り返さないように祈るのみです。 こうした不祥事に驚いていた矢先、食品衛生法で認可されていない食品添加物(香料、酸化防止剤)を使用した製品が、多くの大手メーカーでも使用されていて、回収騒ぎが引き起こされました。 引き続き、中国からの「輸入冷凍ホウレンソウ」に無登録農薬が使用されていて、残留農薬違反で即輸入禁止。他の輸入野菜にも検出され、不信感を抱いていた折も折、国内でも無登録農薬が、身近な尾島のヤマトイモ、榛名の果物等に使用されていた事実を目の当たりにしました。次回はこうした事態を深刻に受け止めて、食品の安全性を見詰めてみたく思います。 (上毛新聞 2003年3月16日掲載) |