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元群馬高専非常勤講師 細井 代吉さん(伊勢崎市末広町)

【略歴】群大学芸学部(現・教育学部)卒。小学校、高校で理科教師を務め、病気療養中の子どもが学ぶ県立東毛養護学校前橋分校で指導し、定年退職。2002年3月まで群馬高専非常勤講師。

血液型性格判断



◎人にラベルは考え物

 輸血や親子鑑定には「血液型」を確認しますが、それ以外に血液型を知る必要はまずないでしょう。ところが、この血液型を何にでも使いたがる傾向があるように思います。

 日本の陸海軍は、大正の時代に、血液型と兵士との関連について研究を展開したが、結果を得られませんでした。昭和二年には血液型による気質の研究という論文が発表され、満州事変後には、O型の兵士を中軸として編成した部隊もあったそうです。

 その後、軍人や外交官にはO型が向いているなど、議論や主張が出たり消えたりしながら、昭和十二年夏には霧のように消えてしまったのですが、昭和四十六年、「血液型でわかる相性」で息を吹き返し、イギリスの科学雑誌にまで発表されました。しかし、統計的な誤りを指摘されて、現在まで学問的な反論はありません。

 性格とは、「ひとがら」「品性」「各個人に特有の、ある程度持続的な、感情や意志の面での傾向」など、多くの説明があり、英語でも多くの表現があります。性格の分類についても、多くの学説があります。また、性格は情動的、意志的な面の個人差がやや強調される違いがありますが、人格とほぼ同じと考えてもいいでしょう。

 ヒトの大脳のうち、最も人間らしい働きをしているところが前頭葉です。なかでも、前頭前野というところは、注意、思考、意欲、情操などの“座”といわれ、この部位が障害されると、注意散漫、自発行動減退、無関心など、人格の変化を来します。

 あることを繰り返し教え込まれると、信じて疑わないようになってしまいます。これが洗脳で、大脳の働きによります。血液型と性格について研究しているO教授によれば、氏の友人は、AB型と思い込んでいて、周囲の人々からも「君はAB型の典型的な人だ」といわれていたが、検査の結果はA型だったという実例があったそうです。人にラベルを付けるのは考え物です。

 そこでO氏は大学生男女二百十八人を対象に、「柔軟な考え方をする」「自己主張が強い」「人間関係の変化に敏感である」「気分が安定している」など、二十項目を用いて調査し、現代の統計学で検討してみたところ、ABO式血液型と性格との間には意味のある結果は得られなかったそうです。

 五感で確かめられないものは人の興味をそそります。興味本位で血液型を結びつけた結果、思わぬ事態を招く場合も予想されます。性格と結びつけて「あなたの血液型は…」と言われた場合、喜ばれるとは限りません。クラス編成に用いたり、部活動のグループや役割を決めるなどの例もあるそうですが、差別や排除という結果を招く心配もあります。現状では血液型と性格を結びつけて考える人が多いと思われますが、軽々しく扱うべきではないでしょう。

 血液型にはABO式のほかに、MN式、Rh式、Q式、E式、S式、T式、ルセラン式、ケル・セラノ式、クームス式、ダフィ式、キッド式など多くの種類がありますから、ABO式のみで性格と結びつけることにも無理があるように思います。この問題は、人間の心の問題ですから、あくまでも慎重でありたいものです。なお、蛇足ですが、血液型は、体液、毛髪、爪(つめ)や骨などにも現れますから、親子の鑑定や犯罪の捜査などには重要な意味があります。

(上毛新聞 2003年2月26日掲載)