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◎普段からの準備が大切 阪神淡路大震災が起きてから八年が経過しました。この間、市民の災害に対する認識、危機管理、情報のあり方が大幅に変わってきました。台風や三宅島・有珠山の噴火等の災害は、行政がある程度事態を掌握して対策を講ずることができますが、阪神淡路大震災のように全く予期しない突然襲ってくる災害は、停電、電話の不通、交通まひ、さらに水道・ガス等のライフラインに至るまで、大きな混乱が生じます。 コミュニティー放送は、地域の人たちに身近な情報を提供でき、二十四時間一切の番組の枠を取り払い、全時間を災害に振り向けられますので、この震災を契機に多くの放送局が生まれました。 おおたコミュニティ放送(エフエム太郎)では、太田市、大泉町、尾島町、新田町、薮塚本町をはじめ、消防組合、電気、電話、ガス、水道と災害緊急放送の協定を結び、火災情報、停電、交通事故等の放送を行っています。また、不慮の災害に備え、市庁舎・消防本部から直接放送ができる設備や市役所の屋上に予備アンテナを設置しています。 しかし、コミュニティー放送は、経営的に小規模のため、情報収集力や発信体制が弱く、自力でニュースを取材し報道するというマンパワーに欠けており、地域の災害に対してどういう情報を集めていくかが最大のポイントです。 平成十二年六月に起きた尾島町の日進化工の工場爆発事故では、社員二人を現地派遣し、被害や道路状況の放送を行いましたが、多くのリスナーの方から「すっぱい味の雨が降っているが、ぬれても大丈夫か」「井戸水は飲めるか」「停電、電話はいつ復旧するのか」「けが人はどこに収容されているか」など問い合わせがありましたが、なかなか情報が集められないという経験をしました。 災害放送の役割は、混乱の中で、人が何を求めているのか、災害の状況をできるだけ早く把握し、より多くの方に繰り返し知らせることが大切であり、さらに今何をやるべきか、災害の拡大、二次災害の発生を防ぐための適切な行動指針を提供することであります。 そのためには、放送局と行政およびライフラインとが日常から情報交換や訓練を行い、マニュアルを作成しておく必要があります。さらには、NHK、県内のテレビ・ラジオ局、近隣のコミュニティー放送局が相互に放送災害ネットワークを組み、情報交換や放送の役割分担をすることも一つの方法です。 二十一世紀は、多様化の時代といわれています。なかでも重要なのが安全と安心のニーズで、安全な環境で、安心な生活をしたい。誰でもが持つ共通のニーズです。大きな災害は、百年に一度、十年に一度かもしれませんが、そのときに役立たなければなりません。それには毎日毎日災害に対する心構えを持ち、市民のために役に立っているか実感を持って放送を続けていくことが大切です。災害に限らず、祭事、火災、交通事故、気象情報に至るまで細かな情報の発信を行い、普段から準備をしておくことが、いざ災害のときの放送を左右する大きな要素になるものと思います。 (上毛新聞 2003年2月4日掲載) |