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◎消費者も理解を深めて 昨年は牛肉の偽装・無登録農薬問題など、JAで営農指導に携わる者として大きな驚きであり、原点を見つめ直す絶好の機会となりました。 特に、無登録農薬問題はあってはならないことでした。JA・農業者とも猛省が必要であり、「食」を提供する者として原点をしっかりと見直す機会としなければなりません。 この問題の背景には二つのことが考えられます。第一が農産物の輸入攻勢による農業生産モラルの低下で、第二が私たち消費者の理解不足です。 まず、農業生産モラルの低下ですが、近年アメリカや中国などから農産物が大量に輸入され、私たちの食卓にのぼっています。 今や、世界中から日本へ向けた生産が日本人の好みに合わせて行われ、輸入されています。その価格は労働コスト等が安いために国産に比べて非常に安く供給されています。 そのために、農家は低価格化を目指し、徹底したコストダウンを図ることが生き残るために求められました。その過程で、輸入された超低価格の農薬が安全性を確保されることなく使用され、その中に無登録農薬が含まれていたのです。 このことは、農業者の生産モラル低下と非難されても仕方なく、残念なことでした。 これを機会に農業者は、消費者に信頼を取り戻させるあらゆる手段に取り組むべきです。 たとえば、生産履歴の開示や安心・安全な生産に裏打ちされた食の提供などです。 次に私たち消費者の理解不足に起因するところがあります。たとえば、ホウレンソウは生育期間中にいろいろな病害虫と遭遇します。しかし、私たちはお店で買う時に、虫くいのない、病害のないできれば安いホウレンソウをと思う人が大多数でしょう。 確かに、虫くいや病害のないものの方が良いに決まっています。でも、そのために農薬が使われているということを忘れてはいけません。 二十一世紀は健康に対する関心が高まるといわれています。ですから、農薬も使用を減らす方向でどんどん進んでいくと思います。 私たちはそうした中で、農作物の病害虫に対して少しずつ理解を深めていくことが健康的生活に役立つのではないでしょうか。 また、低価格化志向は現下の長引く不況と価格破壊という名のもとに当分の間は続くと考えます。しかし、すべての産業が安い労働力を求めて中国等へ生産拠点を移し、そこで作られた安価な製品が日本で流通してそのシェアを拡大していったらどうなるのでしょう。 私たち消費者は日々の暮らしの中で、「食」を抜きにしては生きられません。私たちの健康的生活のためにも、日本の農業者に言うべきことはどんどんと発言し、理解すべきことは真摯(しんし)に受け入れることが重要であり、国際化の中での日本人としてのスタンスを考えることが大切ではないでしょうか。 (上毛新聞 2003年1月28日掲載) |