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◎年代によって変わる 夫婦のことを考えると、人生では独身時代より夫婦で過ごす時代の方がはるかに長いことに気が付きます。結婚一年後の記念日を紙婚式、以後二十五年目を銀婚式、五十年目を金婚式、さらに七十五年目をダイヤモンド婚式(イギリスでは六十年目)と名付けられていることは良く知られています。夫婦である限りこのような式を迎えることは、本人はもちろん、子供や孫も望むところでしょう。どうすれば金婚式が迎えられるか、これは大変むずかしいことであり、健康と努力と運のほか、特効薬といったものは多分ないと思われます。ただし、夫婦の人生は個人差のほか、年代により生き方、過ごし方があり、結果として運があれば共に長く過ごせることになるのではないかと思います。 以下、私の拙(つたな)い経験から夫婦の過ごし方について述べます。教師を続けていると元の教え子より結婚式に招かれる機会があります。まさに教師冥利(みょうり)に尽きる瞬間です。結婚披露宴の席では当然ながら祝辞を述べることになります。新郎への褒める言葉は用意しやすいのですが、新郎新婦への贐(はなむけ)の言葉は何が良いかいつも悩みの種でありました。 ところが今から十年ほど前、渋川高校の教え子に東京の会場に招かれた時です。某大学の某教授の祝辞に大変感銘したことがあります。その表現のユニークさと内容が私の考えと見事に一致するものであり、分かりやすいものでした。 その内容とは、簡単にまとめると「夫婦の人生は年代によって変わる。二十代は愛情の時代、三十代は努力の時代、四十代は辛抱の時代、五十代は諦(あきら)めの時代、そして六十代からは感謝の時代でありたい」というものでした。何と味わいのある言葉。以後、結婚式の祝辞では時々これを使わせてもらい、自分で納得している次第です。昨今の状況を見ると、この年代は五年ほど後にずらせて良いと思います。 私なりの考察を加えると、二十代から三十代前半までは努力も必要だが、愛情でお互いを育(はぐく)むことが中心で良いということでしょう。三十代から四十代前半は努力の時代、人生の方向が定まるほど重要な時期、妻も夫も子育てに仕事に努力につぐ努力が本来の土台となる時代でしょう。四十代より五十代前半は辛抱の時代、努力を重ねた後すぐに結果が表れることはなく、ひたすら辛抱が必要な辛(つら)い年代を経験するということです。五十代より六十代前半までは諦めの時代、表現はいささか不適切な気がしますが、人生の中で自己を冷静に見つめ、自己の現実を肯定することも大切なことだと思います。そして六十代前半以後は感謝の時代。夫婦で愛し、努力を重ね、辛抱し、諦めてきたことに対しお互い感謝の念を持って第三の人生を歩むこと、これこそが夫婦の在り方であると思いますが、いかがでしょう。 私は今六十代半ば。現在縁あって東和銀行に嘱託として勤務しておりますが、退職後は妻に対し今までできなかった償いと感謝を込めて旅行に趣味に妻の相手が多くできる生活をやろうと心に決めているところです。 (上毛新聞 2003年1月13日掲載) |