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元群馬高専非常勤講師 細井 千代吉さん(伊勢崎市末広町)

【略歴】群大学芸学部(現・教育学部)卒。小学校、高校で理科教師を務め、病気療養中の子どもが学ぶ県立東毛養護学校前橋分校で指導し、定年退職。2002年3月まで群馬高専非常勤講師。

カゼ対策


◎暖房で調節機能奪うな

 牛乳を飲むと下痢をする人がいます。こころみに少量ずつ毎日飲むようにしてみてください。きっと普通に飲めるようになると思います。乳幼児期の赤ちゃんの消化液にはラクターゼという酵素があって、乳糖を分解して吸収できるようにしてくれるから下痢しないのです。

 乳離れして、乳糖を分解する必要がなくなると、それに伴って酵素は分泌されなくなります。酵素のないところへ来た乳糖は異物と認識されてできるだけ早く体外へ排出されます。この働きが下痢という現象なのです。ですから少しずつ乳糖を送り込めば、遺伝子が目覚めて酵素の分泌を復活させることも可能ではないでしょうか。

 暑さ・寒さに対しても神経とホルモンによる調節のしくみがあります。高校の授業で指導することの概要を紹介しましょう。暑いときには(1)副交感神経の働きで皮膚の血管を拡張させて放熱を盛んにし、(2)インシュリンの分泌で血糖を減少させて熱発生を少なくし、(3)副腎皮質からのミネラロコルチコイド分泌で汗を出すことによって体温を下げます。

 寒いときには、放熱を少なくするために、(1)交感神経の働きで皮膚の血管を収縮させ、(2)ヒトの場合は名残に過ぎないが、立毛筋の収縮(鳥肌)で毛を立て、空気の層を深くすることによって保温効果を高めます。熱の産生を増すためには、(3)副腎髄質からのアドレナリン分泌で血糖量を多くし、(4)グルココルチコイドの分泌で骨格筋収縮(震え)により熱の発生を増し、(5)甲状腺からのチロキシン分泌による肝臓の働きを活発にします。こうして、熱を逃がさず、筋肉と肝臓の働きで体温をつくって寒さから身を守るのです。

 もちろん、程度問題ですが、このように、私たちのからだは、ある程度の暑さや寒さには耐える力を備えています。安易に冷暖房に頼ると、せっかくの調節機能を怠けさせてしまって、「イザ」というとき役にたたない結果を招くことになりかねません。

 思い切って「夏は暑くて当然、冬は寒くてあたりまえ」と開き直るのもいいのではないでしょうか。昔はもっと寒かったし、暖房は《こたつ》と火鉢しかなかったのですから。

 「カゼ(風邪)」は、「カゼ症候群」とよばれ、それぞれの症状によって病名がつけられ、治療されます。いずれにしても、寒冷刺激だけで発病することはほとんどないそうです。寒さに耐えるという、体内に備わった機能によるものではないでしょうか。

 寒いからと暖房に頼り、神経やホルモンの出番を奪ってしまったら、彼らは働くことを忘れてしまうかもしれません。

 インフルエンザ・ウイルスは、適度な湿度によって活性を抑えることができると聞いています。普通、室内の温度が高くなれば湿度は低くなります。これは、ウイルスにとっては増殖に好都合な環境であると言えるでしょう。寒さに耐えられる体力も、ウイルス対策の一助になり得るかもしれません。

(上毛新聞 2003年1月12日掲載)