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会社役員 猪俣 芳浩さん(館林市大手町)

【略歴】福島県出身。明治学院大学法学部卒、大学院経済学研究科修了。都内でフリーの文筆業。結婚を機に館林市へ。2000年から館林市の「まちづくりを考える研究グループ」に参加。日本NPO学会会員。

まちの将来


◎市民と行政の協働で

 仕事や私生活にかかわらずインターネットを使った情報のやりとりや収集がここ数年、急激に増えてきた。コンピューターと対座するだけでさまざまなサイトと交信できるインターネットは生活上不可欠なものに感じる。私の活用方法はメールだけでなく、気になるキーワードを検索サイトに入力し、関連サイトをのぞいて見ることが多い。

 最近、ある雑誌の記事で「市民と行政のパートナーシップ」を意味する「パブリック・プライベート・パートナーシップ(略してP・P・P)」というキーワードが目に付いた。早速、検索サイトに入力したところ、ある民間のシンクタンク(総研)のホームページにたどり着いた。そこでは、日本ではなじみがないP・P・Pという考え方を基本として「二十一世紀の行政と地域づくり」についてさまざまな立場の人間が集まり、研さんを重ねていた。報告内容を引用してみると「今、必要なのは公共サービスを私的執行(民間)と公的執行(行政)の両極に追いやるのでなく、中間にある協働たるパートナーシップに位置させることである」とあり、戦後五十年強続いた行政依存の公共サービスを民間との協働によって質的改善をする考え方だった。

 「まちづくりを考える研究グループ(まち研)」に参加して二年半ほどたつ。このグループにいわゆるまちづくりのプロは一人もいない。サラリーマンや学生、主婦、そして支援事務局の行政マン等、さまざまな立場に属するメンバーが集まり、それぞれの意見を交換し合っている。夏祭りに元気がなくなったという意見が出れば、実行委員会のメンバーとして参加し、地域住民の意見は? という問いにアンケートを実施してみた。また、鶴生田川の親水化のためのイベントや創業希望者のためのセミナーも開催してみた。いずれの催しも参加者はボランティアで、質的な問題は別として一部の経費を除き無償のサービスの提供と言えなくない。

 民間非営利団体(NPO)の活動が活発化して久しく、群馬県にも百八十を超えるNPO法人が存在する。また、法人化されてない団体を含めれば県内の非営利団体の数は数百に及ぶかもしれない。しかし、一方で景気停滞による税収不足で国に限らずどの自治体も財政危機がささやかれている。

 公共に近いサービスをしようとする団体が急増する中で、公共サービスを提供してきた行政が財政難に陥っていることは何か効率性に乏しい。前述のシンクタンクの研究も「公共サービスのすべてを私的執行に委ねることは、分業体制全体に対する行政機関の調整・監督コストを増大させる」という。確かに、サービスのすべてを民営化してしまえば公平性を保つ上でも監督が不可欠になる。しかし、まちづくり等の公共サービスの向上とコストの削減は官・民を問わず共通の願いのはずであり、双方が「共通の言葉」で語り協働する仕組みいかんでは可能となるのではないか。その道のプロと素人が同一の席につくこと自体困難なことかもしれないが、私自身、まちの将来を一緒に考えられるよう頑張りたい。

(上毛新聞 2003年1月9日掲載)