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関東学園大経済学部経営学科教授 入江 省熙さん(太田市飯塚町)

【略歴】韓国ソウル延世大卒。北海道大大学院経済学研究科経営学専攻博士課程修了。マーケティングを専門に、国内や米国、韓国の市場を観察、ユニークな視点で解明している。

マーケティング


◎ヒントは意識の中に

 常識やマニュアル、定説等は多くの人の同意が得られたものがそうである。また、その同意は過去よりの結果が基となる。従って、伝統というものの良さはたくさん存在するが、現世には納得してもらえなくても後世に認めてもらえる、つまり、確立の高いものは期待を確信へと変えるべく信念に基づいて実行すべきであろう。元オリックスのイチローのバッティングがまさしくその良き例である。

 本来マーケティングは企業の販売活動を促進するために生まれたものであるといえる。しかし、近年その基本概念は多方面にわたり活用されている。病院の場合、病気を治すか病気にならないようにすることが本来の病院の役割である。しかし、小児科は子供に優しい環境づくり(医者や看護師の衣装や名札、遊び場等)に心がける。すると、いくらか大嫌いな病院ではなくなってくる。いわゆるホスピタルマーケティングである。

 また、大学は本来学問を追究する研究の場である。しかし、進学の機会が今日のように拡大されることによって小・中・高・大学へと一貫性のある教育をさまざまな個性に合わせて行う必要があろう。そこで国内六百以上ある大学の中でも約七十校は精力的にマーケティング活動を展開している。山梨学院大学の駅伝、大東文化大学のラグビー、ドーム球場内看板広告、芸能人や有名運動選手の入学等がそれである。

 昨年十月十日付の日経流通新聞三面に“地方発ブランド”と興味深い記事が掲載された。低迷する岐阜県のアパレル産業を救うべく、なんと県がホリプロと提携をしたのである。県を売り込むために「ブランド化」「客層絞り込み」「リピーター作り」をキーワードに、地域の産業を振興させようと本気を出した。地方自治体が消費者という存在を意識しなくてはならない時代になっているということは誰もが知っているはず。しかし、世間一般の常識というものはそう簡単には変えられない。その是非の判断を後世に任せるのはあまりにも無責任なことである。信念を持って何ごとも取り込むべきである。

 わがまち太田にも当然のごとく良い、悪い、しつこい、和やかなものなどいろいろな伝統が、常識が存在する。しかし、これからの常識を、これからの伝統をつくろうとする動きはあまりみられないのである。このようなものは専門知識のあるものだけが実現可能なものではない。われわれの商店街やわが社の商品が誰よりも私が、私の家族がもっとも楽しめるものにならなくては、市場活性化にはつながらないのではないだろうか。多くのヒントは各自の意識のなかに潜んでいるに違いない。また、何をすべきであるかを各自は知っている。実行する最適時期は市場の動きが鈍い今がチャンスであるといえよう。すてきな、多くの上州のマーケティングな人と会えるのが非常に楽しみである。また、その日が一日も早く訪れることを心より願う次第である。

(上毛新聞 2003年1月5日掲載)