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お茶の水女子大学大学院人間文化研究科教授、学術博士
内田 伸子さん
(千葉県市川市)

【略歴】沼田女子高校、お茶の水女子大卒、同大大学院修了。専門は発達心理学。子どもの発達研究センター長。放送大学客員教授。著書に「発達心理学」(岩波書店)「子どもの文章」(東京大学出版会)など。

女性研究者の育成


◎性差別の現状改めたい

 平成十六年から国立大学は独立行政法人化される。私どもの大学も、独法化に向けて生き残りの道を模索してきた。どうやって生き残るか? 統合の可能性も探った。しかし、本田和子学長のリーダーシップのもと、女子大学の独自路線を歩むことを選択した。なぜ、今、女性研究者の育てようとするのか。

 私が所属する人間発達科学専攻では「誕生から死までの人間発達科学―生涯発達追跡センターの構築―」という拠点を構想し、二十一世紀COEプログラムの「人文科学」領域に応募し、ヒアリングに臨んだ学長のいつもながらの鮮やかなプレゼンに続き、私の説明は十五分。制限時間内に収めることができた。

 質疑応答では時間配分がうまくいかず満足のいく答えができなかった。二十四人の審査委員のうち女性の委員はお二人だけ。そのうちのお一人が出してくださった質問はお茶大が女性研究者を育成することにおいて留意していることや女性研究者を今の時代に養成しようという目標を掲げることの意義についてのものであった。この問いこそは、私自身が院生の指導にあたるときにいつも念頭においていることである。にもかかわらず十分に意をつくせなかった。

 研究者として生きるためには大学や研究所のポストを得なくてはならない。しかし女性には門戸が閉ざされている。大学院進学時点ですでに「女には就職の世話をしない」と公言してはばからないような教員も多い。共学大学の大学院ではこのような性差別があたりまえのようになされている。

 四年制大学の女性教員の割合は領域によっても凸凹がある。家政学は女性教員の割合が33%で最も高率である。しかし医学や法学は2―3%と非常に低い。私の所属する心理学界では、女性教員の割合は五十代、四十代、三十代と年代が若くなるにつれて、11、14、19%と大きくなる。しかし学会誌の女性著者の割合は心理学会が組織されて以来、常に三割を占める。学会誌の女性の著者の割合と就労率を単純に比較はできないものの、このアンバランスは、研究に従事していても就職できない女性が多いという状況をうかがわせるものである。実際によい研究をし、教育能力も期待される人々が、女性というだけで切られている現状はなんとしても改善していかねばなるまい。

 人間発達科学専攻(定員十五人)の過去五年間の教育実績は、博士学位授与数が課程博士二十八人、論文博士二十人。学術雑誌掲載論文数は二百六十六本、そのうち学会賞獲得数は十六本。修了者全員を四年制大学に就職させてきた。COEの拠点に選んでいただいたのをきっかけにして、研究生活の支援のしくみを工夫し、今までにも増して、頼りになる任せておける女性研究者を育てていきたいと考えている。

(上毛新聞 2002年12月25日掲載)