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まちづくりコンサルタント・コモンズ主宰 庭山 由紀さん(桐生市新宿)

【略歴】日本大大学院博士後期課程修了。農学博士。昨年はオリジナルカレンダー「桐生楽暦」や目的別地図「桐生楽地図」を製作するなど快適な桐生暮らしを追求。県一郷一学の講師なども務める。

市町村合併


◎補助金という名の借金

 今、世間を騒がせている市町村合併問題(といっても、行政に関して利害関係のある一部の人びとの間で話題になっているのだけれど)は、フツーに暮らす私のような一般人が様子を見ていると、上っ滑りをしているように見えます。

 まず、私見でありますが、地域・まちづくりを考える上で、(1)負債を抑える、つくらない(この「負債」には、いわゆる借金と環境への半永久的な悪影響を含めます)(2)ふるさと地域を愛する人びとをはぐくむ、の二点は心に留めておくべきではないかと考えます。

 この二点をふまえて合併問題を考えますと、以下の点に疑問があります。

 (1)二○○五年までに合併すれば、補助金が出るということ。「何かやりたいことがある時に補助金をさがす」のと、「補助金があるから何かしましょう」というのは全く異なります。「補助金があるから…」で何かをすると、無駄だったり、だまされることが多いのではないかと思います。

 (2)返還義務のある補助金は「借金」です。合併すれば補助金を出すと言っているけれど、返還義務のある補助金は、言い換えれば「借金」です。この補助金という名の「借金」は、私たちのかわいい子どもや孫に受け継がれるものです。現状において、行政サイドはすでにたくさんの負債を抱えているのに、これ以上借金をして大丈夫なのでしょうか。

 (3)合併して「効率化」すれば、私たちの生活は良くなるのでしょうか。経済効率至上主義的な開発計画によって「効率的」に進められてきた今までの、地域・まちづくりから「効率化」という言葉のもと、中央でない周辺の地方が、画一的なまちづくりが行われてきました。特に弱者が切り捨てられてきた経緯は明らかです。そういう「効率化」は、私たちの求めるものなのでしょうか。

 (4)地方自治に関する私たちの認識の甘さ。この合併話は、国が現状の、あるいはこれ以上の「お金やサービス」を提供できなくなったので、地方にこれらを押しつけているところから始まっています。そして地方も、決して財政的にゆとりはありません。よって、これらは近い将来、私たち自身に降りかかり、問われる問題です。しかし、私たち一般人は、まだまだ地域自治を意識、認識していません。

 以上のことから、市町村合併は今すべきことではないように思います。今、私たちがしなくてはいけないことは、経済状況が悪化・停滞する中で、生活の質のあり方を見つめ直すこと。自己責任をふまえて「自分たちの地域のことは自分たちで考え決定し、自分たちで支えていく」という地域自治の方向性を探ることではないでしょうか。また、必要なものと必要でないものを区別し、必要のないことは少なく、そしてできればなくしていくべきではないでしょうか。

 市町村合併は、地域の人びとが地域自治について意識を持ったときに行われるべきもので、補助金という名の「借金」をしてまで、行うことではないように思います。

(上毛新聞 2002年12月22日掲載)