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◎経済性重視から脱却を 環境という言葉が私たちの生活に重要なものととらえ使われていますが、それが私たち人間・生物と相互作用があり、ともすると悪影響を及ぼし合う自然・社会環境として意識して使われ出したのは、ここ十年の話ではないでしょうか。一九九〇年以降のバブル経済の終えんとともに、その豊かな生活の裏側にあった使い捨て文化・ごみ問題が表面化し、環境問題は大きく注目を集めました。豊かな生活ができるようになり、やっと環境問題に目がいくようになったともいえます。 では、以前になかったかというと、それは太古の昔より人の営みには必ず環境問題が存在したはずです。近年では、公害という形で六〇年ごろからの高度成長時代に顕著に表れ、経済成長の副産物として各地で発生しました。日本の環境問題は公害から始まったと言ってもいいでしょう。 特定の公害排出企業と産業廃棄物の問題と考え、産業界からの公害防止に取り組み、法整備も進み、国内における公害問題は一段落、公害防止技術も大きく進歩しました。しかし、二十一世紀を迎え、環境問題は新たな局面に至ろうとしています。目先の公害問題だけを解決しても環境は改善されず、地球規模での環境破壊は大きく進行していたのです。 環境問題を地球的規模で考えるため、国連(UN)の提唱により七二年、ストックホルムで「国連人間環境会議」が開催され、それを契機に国連環境計画(UNEP)が設立されました。UNEPは国連総会から広範囲に重要な任務を与えられ、先進工業国での環境汚染に反対する活動から始まり、再生可能な自然資源の浪費や誤った利用が生み出す問題まで、環境を傷つけない持続可能な開発を推進していくことが、UNEPの主な任務といえます。環境サミットの開催や、気象変動枠組会議における京都議定書の制定などUNEPの活動は、ますます重要となっています。しかしながら、国連レベルからの提唱だけでは、京都議定書における米国の離脱などに見られるように、地球規模で足並みがそろった活動はできていません。そこで、より実践的な活動を行うため、昨年十一月世界に先駆け日本国連環境計画JUFが設立されました。そしてより具体的な活動を行うべく、国内で第一号の地域支部として群馬支部を設立しました。 環境問題は、自治体や企業、個人だけの問題ではなく、もはや国内問題だけでもありません。公害から始まった日本の環境問題は、出さなければよいという安易な発想があり、環境保全そのものには直接的生産性がないため軽視して、積極的に広義の活動をしようとしません。しかし、限られた資源の地球に、増大した人口を抱え、私たちは生きているのです。そこには新たなさまざまな環境問題が発生しています。生産性や経済性だけを重視する社会からそろそろ脱却し、企業や個人も環境問題を前向きに考え、それが最後には本当の豊かな暮らしをもたらすものと認識したいものです。 (上毛新聞 2002年12月13日掲載) |