視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
佐野短期大学社会福祉学科教授 日比野 清さん(館林市堀工町)

【略歴】東京生まれ。12歳の時に失明。明治学院大学、大阪市立大学大学院修了。社会福祉法人日本ライトハウス・視覚障害リハビリテーションセンター所長などを経て、現職。

バリアフリーとは(1)


◎誰にでも存在する障壁

 皆さんは、「バリアフリー」とか「ユニバーサルデザイン」という言葉を聞いたことがありますか?

 「バリアー」とは「障害物、障壁」という意味ですから、バリアフリーとは「障壁のない、制約のない」という意味に解されるでしょう。また、「ユニバーサル」とは「普遍的な、万能な」という意味ですから、ユニバーサルデザインとは「誰にも利用可能なデザイン」と解されます。バリアーというのは、しばしば「障害のある人にとってだけのもの」と考えられがちですが、決してそうではありません。高齢者、妊産婦、乳幼児、外国人、左利きの人、背の高い人等々、誰にでもバリアーは存在するのです。従って、「障害のある人のことは私には関係のないことだ」と他人事のように考えるわけにはいきません。成人病をはじめとするさまざまな疾病、思わぬけがによっても、誰もが障害のある人に成りうる危険性があると同時に、不自由な状態や状況になりうることも認識しておかなければなりません。また、バリアーは人間を取り巻く環境や設備等によっても変化するのです。言い換えれば、バリアーはつくられると言っても過言ではありません。

 特定の人だけでなく、誰もが使用できる、あるいは使いやすい商品を「バリアフリー商品」と名づけていますが、「なんらかの障害や機能低下がある人もない人も、共に使いやすくなっている製品」と言えます。それは障害のない人たちが使う一般品でもなく、特別なニーズを持つ特定の人たちの専用品でもない、両者が共に使える「共用品(ユニバーサルデザイン商品)」というべきものです。例えば目の不自由な人のために、同じ形状ボトルのシャンプーとリンスを見分けられるように、シャンプーボトルの側面に凸線を入れたり、各種のプリペイドカードの種類と方向性を示すために、カードの左手前に切り込みを入れ、さらにその形状をテレホンカードは半円形、乗り物用は三角形としたり、プッシュホンや電卓キーの5に凸点を付けてホームポジションを示し、見なくても操作ができるようにしていることなどがあげられます。しかし、これらは目の不自由な人のためだけにあるのではありません。ちょっとした工夫や印を付けるだけで、どのような状況に置かれようとも誰もが利用できるようにしているという点に意味があるのです。

 このような考えは、日本だけでなく世界各国の社会福祉の基本理念、または原理として定着しているノーマライゼーションの考え方にも通じるものなのです。それは子供、高齢者、障害のある人、すべての個人が人間として尊ばれ、共存していく(共に生きる)社会がノーマル(当たり前)であるという考え方です。私たちは今、ノーマライゼーションの理念を再度重要視し、それを実現化しなければならないのです。

(上毛新聞 2002年12月11日掲載)